ルーカ神父と朽屋瑠子は地下室へと向かった。
・・・・・・
涼が自転車で坂道を駆けおりる。
教会が見えてきた。久しぶりに訪れた教会には、あの目立つガーゴイルがなくなっていた。
教会の門をくぐり、自転車を押しながらキョロキョロ辺りを見回す。
涼にとってはこれも不可解な点ではあった。
より子ちゃんはこの教会のいったいどこに住んでいるのだろう。
いつも呼びかけると突然どこかから現れる。
でも今までもそうやって会って来た。・・・不思議だ。
「より子ちゃん・・・より子ちゃんいる?」
小さな声で呼びかけながら、いつも一緒にいた木陰に立ち寄り、少し待ってみた。
しばらくするとより子が白い光と共にスーッと静かに横に現れた。
そしてこの時、涼はあることに気付いてしまった。
初めて出会ってから数年がたち、自分はもういっぱしの中学生で背も伸びたのに、
より子ちゃんは昔のままの小さな少女のままなのだ。
その事に今更ながら気が付いて、自分の中に強い違和感を感じてしまった。
いや、その可能性は薄々気付いていたのかもしれない。
だが、信じたくない気持ちがそうさせていたのか・・・
「涼君・・・」
より子は久しぶりに会う涼がすっかり成長した若者らしい姿になっている事にうれしさを感じていたが、彼の目は怯え、少し動揺して後ずさりしている様子がうかがえた。
(涼君?・・・どうしたの?)困惑しながら涼を見る。
涼は目の前のより子から目をそらしながら、ひとつ質問をした。
「もしかしてより子ちゃんって・・・幽霊・・・なの・・・?」
より子はこの時ハッと思い出した。自分はもう何十年も前に戦争で死んだ子供だった事を。
ここ数年、涼に出会い、朽屋瑠子に出会い、ルーカ神父に守られて、
まるで生きている時と変わらない、いや、それ以上に楽しい毎日を過ごしてきたせいで、
自分がもうこの世のものではないという事をすっかり忘れていた。
(どうして私、こんなことに気が付かなかったんだろう・・・どうして私、子供のままなんだろう・・・ルコちゃんが中学生になって成長した姿を見ていたのに、ぜんぜん気付かなかった・・・。涼君だって成長しているのに・・・私はいつまでも10歳のままで・・・バカね、私って・・・)
より子は少しうつむいて、悲しそうな顔になっていた。
青白い顔がさらに青白くなって行く。・・・そしてだんだんうっすらと消えていった。























kamaです。先ほど投稿させていただいた「より子ちゃん」の裏で起きていた一大事件を書かせていただきました。まず先に「より子ちゃん」を読まれてからこちらを読むと、面白さも倍増かと思います。
またこの「朽屋瑠子」シリーズも今回で4作目となりますので、合わせて他の朽屋瑠子シリーズも読まれると世界観が広がると思います。
あと、今回27ページもの大長編となってしまいました。頑張って読んでくれた方、ありがとうございます。・・・これだと誰も怪談朗読してくれないだろうから、そのうち自分でやろうかな・・・と思ってます。
まるで吸い込まれるような感じで、最後まで拝読させて戴きました。続きを早く読みたいです。
↑kamaです。27ページもあるのに読んでいただき感謝です。
朽屋瑠子シリーズは今後、短編をいくつか出しつつ、たまに長編みたいな、そんな感じで出して行こうと思ってます。
kamaです。
涼君が押し入れの鉱石採集セットを見つけてより子ちゃんに再開するシーンに、
『ローズクウォーツが抜け落ちた鉱石採集セットのように、
涼の心にもぽっかりと隙間が空いているようだった。』
という一文を追加させてもらいました。
・・・詩的でしょ?
まさに、涼君の鉱石セットのくだりがホロリと来ました。短編物も拝読させて戴きましたが、瑠子シリーズはスリルがあっていつまでも読みたくなります。
↑kamaです。ありがとうございます。どこかホロリとくるシーンがあるのって、いいですよね。怪談は怖い話ばかりじゃないと思いますし。
奇々怪々に「怖いボタン」以外も欲しいです~。
また楽しみにしていてくださいね。
ボクはより子ちゃんが泥だらけになっても涼君を追いかけるとこでホロリと来ました。
より子ちゃん単独の話だけ見ていると、子供の誕生日になぜ教会から出られないより子ちゃんが家まで来たのかわからなかったけど、これでつながりました。
↑kamaです。ありがとうございます。朽屋瑠子シリーズは、ボクの作品の裏で起きてる解決編みたいな構成で、オムニバス的に楽しめるようにしてます。これからもよろしくお願いします。
今まで投稿話の中で27ページという最長の話を投稿されたkama先生お疲れ様です。ところで今回の話も場合によっては改稿などで短くなるでしょうか?
↑kamaです。ありがとうございます。改稿の可能性は無いとは言えませんが、今のところは「やり切った感」が強いので、あったとしてもたぶん1年後とか、あるいは改稿しないか・・・という感じです。そうですね・・・やるとしたら戦争の歴史を説明している部分をもう少しはしょるとか・・・ですかね。でもあの部分もより子ちゃん親子がいかにして生涯を閉じたかの部分なのでバックボーンとしては残しておきたい気もしますし。まぁとりあえず今は次の作品を出すことの方を優先したいと思ってます。ありがとうございます。
色々な方の長編作品を読んでいた際にkana様のクッチャルコシリーズを見つけ、初投稿から読ませていただいているのですがこの話で先に読んでいた作品と繋がってとてもテンション上がりました…!!
本当に楽しく読ませていただいてます!!ファンです!!!