いつもそこから
投稿者:ぴ (414)
親子仲がすこぶる悪くて、私は早くに実家を出たいと思いました。
だから高校を卒業してすぐに一人暮らしを始めようとしたのです。
しかし、実際に働いてみるとこれがなかなかうまくいかず、働いてはやめてを繰り返しました。
次第にアパートの家賃が支払えなくなり、困り果てた末にどうしようもなくて、高校が一緒だった友達を頼り、その家に転がり込みました。
どう考えてもかなり迷惑だったと思うのですが、友達は嫌な顔一つせずに快く私を家に迎えてくれました。
それどころかいつまでいてもいいよと言ってくれたのです。
もちろん家賃は半分出すと言ったのですが、彼女は「いいよいいよ」と受け取ってくれませんでした。
どうやら住んでいるマンションが破格の安さらしくて、お金で困ってないからと私を快く受け入れてくれました。
友達も私と一緒で家族仲が悪くて、そのせいで早くに一人暮らしを始めたのです。
だから私の気持ちを誰よりもよく分かってくれたのだと思います。
辞めた職場の愚痴もきっちり聞いてくれたし、二人して親の愚痴大会で盛大に盛り上がりました。
友達が住んでいるマンションは、わりと高級住宅地にありました。
部屋に入ると広々としたマンションで、インテリアもおしゃれだし、賃貸料が安いだなんて思えないような内装でした。
気になっていたお風呂もトイレもしっかり分かれていたし、寝室も二つあり、何不自由なく暮らせそうに思いました。
こんなところで暮らせるんだとすごく驚いたし、益々家賃が心配になりました。
けれど友達はいくら聞いても賃貸料は答えなかったです。
とにかく家賃が安いということと気にせずに何日でも泊まっていけばいいよと言ってくれました。
私もありがたくて、泣きそうになりました。
その日は友達に相談してみて良かったと思ったし、この家に住めるだけでありがたいと思っていました。
ただ住み始めてそのマンションが普通のマンションではないと気づくまでには時間はかかりませんでした。
友達の住んでいるマンションは3階建てのマンションの2階に位置する場所でした。
初めてマンションを見たときは、新しくてキレイでスタイリッシュで、とても住み心地がよさそうと思ったのです。
それに生活する上で何か困ったり、居心地が悪いと思うこともなかったです。
ベッドもとても柔らかい素材だし、お風呂もトイレも問題なく今どきの高機能のものでした。
だけど、一つだけ気になることがあります。
それが夜になるといつもそこから低いうめき声が聞こえてくることでした。
最初にこの声を聞いたのは、部屋で履歴書を書いているときでした。
新しい仕事を探さないといけなかった私は夜中に履歴書とにらめっこしていたのです。
そしたら友達の寝室の方からよく分からないうめき声のようなものが聞こえました。
友達が面白半分でわざと出している声だと思いました。
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