ありがちな場所
投稿者:キノ (7)
父の話です。父は職場で徹夜することもたまにある仕事をしていました。
ある若き日の夜10時ごろ、職場の父の部屋から守衛さんに内線で泊まり込む旨を連絡すると、「お疲れ様です。みなさんお帰りになってもうその建物で残っているのはあなただけです、私も帰りますね」と言われたそうです。
それから数時間仕事をして、煙草を吸うために部屋を出た時のことです。非常階段の戸を開けて背筋を伸ばしたりしていると、上階から「たん、たん、たん」と足音がするのです。場所柄よくあることだったので、「ああ、きっと誰か若者が忍び込んだんだ」と思ったそうです。
「暗いから気をつけなさいよ、電車ももう終わってるけど帰れるんですか?」と声をかけたのですが、相手は無言。ただ「たん、たん」とだけ聞こえます。仕方がないので階段を上がってみたけれど誰もいません。疲れているせいだと自分を納得させ、仕事を中断して自室で仮眠したそうです。
翌朝、出勤してきた守衛さんに「昨日、僕以外にも誰か残っていましたよ。足音がしました」と報告すると、ものすごく嫌な顔をされたそうです。
「聞かれましたか。こういう場所だとありがちですけどね…」
昔その非常階段で亡くなった方がおられたそうで、その方の宙ぶらりんだった足がビル風にあおられて壁に当たっていた「たん、たん」という音を聞く人がたまに出るのだと。(死因はおっしゃらなかったそうですが、「宙ぶらりん」で丸わかりですよね…)
「ここだとありがちなんですか?」と父が尋ねると、守衛さんはため息混じりに、「先生、学校と病院は人死が多いんですよ。病院は当たり前だけど、学校では非業の死です。だからですかね、病院よりずっと出ます」と教えてくれたそうです。
それから父は研究室に一人で残るのをやめたそうです。
怖い。。