バスから降りたら知らない町だった
投稿者:すもも (10)
「こっちも電気が通ってないわね」
おばあさんは箱型テレビを操作してみるものの電源が入る事は無く、傘のついた旧式の照明の紐を引っ張っても点灯しませんでした。
そればかりか台所の冷蔵庫を開けてみればやっぱり電源が入っておらず、中身も容器なんかのゴミはあれど食料は空っぽでした。
そもそも人が住んでいるような様子が見受けられないのです。
「何か気味が悪いな…」と呟く男性。
私達は灯かりのない暗い和室に戻り、これからどうすべきか話し合いました。
この家に電気が通っていないので電話は望み薄。
日が暮れたらこれ以上歩くのは野生動物との遭遇もあるので危険。
そして皮肉にも私達は戸締りできる平屋に居る。
つまり、このままここで一泊する他選択肢はないのですが、私も含めておばあさんも男性も家族や会社にどうにか今日中に連絡できないものかと頭を抱えていました。
そんな中、日が完全に沈んだ頃でしょうか。
残り少ない男性の携帯の液晶画面の明かりが光源となっている状況の中、どこからか太鼓の音が聞こえてきました。
『ドンドン、ドン。ドンドン、ドン』そんな感じのリズムの繰り返しだったと思います。
お祭りか何かが始まったのかと思った私達は耳を澄ませました。
音の方向的に表通りの道路。
私達が降りたバス停の方角からです。
実際にはおじさんの軽トラックでここまで送迎してもらったのでかなり距離がありますが、不思議とバス停の方角から聞こえていると確信できました。
「…どうします?」
「人がいるのかしら」
「見て見ない事には…」
正直、三人ともここまでの疲労や不安で心身共にやつれていました。
おじさんという得体の知れない恐怖を体験した後という事もあって、あの太鼓の音の先に変な団体がいたらと思うとここでじっと朝まで待機していた方がまだ安全ではないかと考えてしまいます。
『ドンドン、ドン』
そんな太鼓のリズムがはっきりと聞こえる距離に近づくと、人の声も入り混じるようになりました。
人混みの歓声とまではいかずとも、大勢の人間が語らっているような重なった声の塊。
やはり人が居るのは間違いありません。
問題は、その人たちが善人か悪人かの杞憂だけですが。
「…見るだけ見てみませんか?」
私はこのままここでトイレも風呂も水場もない場所で一泊するよりは、外の人達に助けを求めた方がいいと思い、そう提案しました。
遠目から見て、地元の人ぽかったら助けを求める。
何か怪しい集団だったらこの平屋に引き返す。
おばあさんと男性も、電気も食料もない環境から抜け出す手があるのなら今すぐに抜け出したい気持ちは同じはずです。
読み応えがあり引き込まれました。とても文才がおありと存じます。
眠りがスイッチになって、不思議な世界が同時間軸に存在しているのかも?という好奇心が刺激されました。
電車やバスなど交通手段で意図せず異世界に移動してしまったお話は、きさらぎ駅同様、とても興味深いです。
きさらぎ駅と同じ太鼓の音。
3人とも無事に帰還され良かったです。
こういう話わくわくするね
おばあさんは平屋で待っていて、無事だったのか気になる…
これ映画の「きさらぎ駅」と、ほぼストーリー同じじゃない?
単に電車がバスになっただけで。
きさらぎ駅と違ってハッピーエンドで良かったじゃん
その場所、何か曰くみたいなモノがあったりするのかな? それで白昼夢みたいなものを偶々、寝ていた三人が魅せられたみたいな事なのかな、と思ってね。 なんか、現代回顧版みたいな話しだよな〜。
展開に無理がなく、情景が浮かんできます。
おいおい、運転手に聞けよ。ってか、一番怪しいじゃん。
引き込まれました。どういう展開、どういう結末なんだろう・・・と。読んでいてここまでドキドキするのは私としては珍しく、久々に良質の怖い話を読ませて頂きました。ありがとうございました。
とても面白かったです
やっぱ異世界があるとしてもこんな感じに似てるけど常識が全く通じない異様な場所なのかな
あんななろう系のファンタジー系じゃなく
面白かった。
唯一思うのはその状況だったら最後3人で大騒ぎするでしょ
そそくさと降りるかなぁ
おっさんの意図が気になるな
最初は危害を加えようとしてるのかと思ったけど、村民達は三人が来てる事を聞いてなかったっぽいし眠らせて家から出ないようにする事で夜現れる村民達と遭遇させないよう守ろうとした可能性もある…のか?