折れたスプーン

綺麗にぱっきりと。

鉄製のスプーンの、触っていない持ち手の先が。

怖いですよねぇ。

父も母も、私も、隣のファミリー席に座っていた

知らない家族連れも、固まりました。

私は取り敢えず自分が無実である旨を訴えました。

私は知らん、触ってない、というか触っていたところで

このスプーンは鉄製だぞ、私に折れると思うか？

と、家族に捲し立てました。

父に

「わかったから落ち着きなさい」

と嗜められて、黙った記憶があります。

なんだかよくわからんが不気味だなぁ、と話しつつ食事を終え、

水族館の方には

よくわからんが急に折れました。

弁償いたしますので…とお金を渡して

お詫びを申し上げました。

スタッフの方も固まっていました。

そりゃそうですよね、折れたのは鉄製のスプーンですから。

水族館を後にし、次に私たちは旅館に向かいました。

受付を済ませ、部屋に入り、私と妹は浴衣にはしゃぎました。

しばらくゆったりと部屋でくつろいでいたのですが、

母のスマホに電話がかかってきました。

母は洗面所のほうで話しているようでした。

少しして洗面所の扉が開いたので母を見やると、

ぼろぼろと大粒の涙をこぼしていました。

電話の内容は、私からみて曽祖母にあたる人の訃報でした。

それを知った父も妹もショックだったようで、

楽しい旅行の雰囲気はどんよりと沈んでしまいました。

夕飯は我が家が大好きなバイキング形式のものでしたが、