足が多い

知り合いのKさんに聞いた話です。
大学時代に、4人で湖畔にキャンプに行った時のこと。
夜はバーベキューをし、深夜まで話し込んでいたそうです。

そろそろ寝るか、と火の始末をして、テントに入りました。
男4人がじゅうぶん横になれるほどの大きさです。
中にはひとりの友人が横になっていました。
2時間ほど前に「眠すぎてダメだ、もう寝るよ」と言って、
先に寝ていたのです。
3人がテントに入っていっても、目を覚まそうとしません。

「よく寝てるなー」
Kさんは明かりを絞ったランタンをちょっとそちらに向けました。

「え？」
友人はタオルケットのようなものをかぶって寝ていましたが、
膝から下が外に出ていました。
その足が4本、つまりふたり分あるのです。
ランタンを明るくして、よく見ると、もう一対の足は、
眠っている友人からは不自然な位置にあります。
それは細くて青白く、女性の足のように見えたそうです。

「お、おい……」
仲間のひとりが恐るおそるタオルケットをめくろうと手を伸ばした時、
するするっと、もう一対の足が中に入っていったのです。
Kさんたちが驚いて声を上げると、眠っていた友人も、びっくりして目を覚ましました。
「誰か隣にいなかったか？」
と、聞いても、
「なに馬鹿なこと言ってるんだよ、おまえら飲みすぎたんじゃないのか？」
と、その友人は呆れたように言いました。

「その後は特に何事もなかったんだけどさ、アレはなんだったんかね」
Kさんは苦笑混じりに首を傾げました。