友達のひとりが怯えた表情であたりを見回しました。
が、声の主はどこにも見当たりません。
そのとき、伯父の脳裡には、あの日の記憶が蘇っていました。
お祖母ちゃんの『仁王様にはたかれるよ』という言葉。
後頭部に感じた衝撃。
天井からあらわれ出た筋骨隆々の腕(の想像)。
寺院の門前に立っている恐ろしい形相と逞しい体格の、
まさにあの『仁王様』のイメージが浮かんでいました。
その仁王様が「帰れ」と言っている……。
伯父はまだ遊び足りなさそうな友達を急かし、弟の父を追い立てるようにしてふもとまで下り、
自転車を走らせて家路についたそうです。
そして全員がそれぞれ自宅についたタイミングで、雷鳴が轟き、篠つく雨になりました。
その翌日、人的被害こそありませんでしたが、豪雨で地盤が緩んだのか、
『アマゾン山』の一部が地滑りを起こしたのだそうです。
もしあのまま山の中で遊び続けて、それほどの雨に降られていたら、
なにか事故にでも遭っていたかもしれません。
伯父は、お祖母ちゃんの言ったとおり、仁王様が俺たちを見ている、
そして悪いことをしないように見張っているのだと思いました。
「だからな、俺は本当に道を踏み外しそうなギリギリのところで踏みとどまってきたんだよ」
伯父は若い頃には悪い仲間とつるんでやんちゃもしたそうですが、人道を踏み外さなかったのは、
仁王様が見ていたからだ、と言って笑いました。
あの場にいた父も「帰れ」と警告した声を聞いており、ことあるごとに兄である伯父から、
「仁王様が見てるんだぞ」と言われていたそうです。
「でも本当かねえ……俺は叩かれたことなんて一回もないけど」
父が首を傾げると、
「そりゃお前は俺と違って真面目で大人しい良い子だったからな」
と、伯父に言われて苦笑していました。
本当に誰もが想像する、あの『仁王様』なのかどうかはわかりません。
しかし、確かに父の兄弟たちは『何か』に見守られていたのでしょう。
母方の祖父祖母や、母のきょうだいも不思議な体験をしている人が多いです。
その血を引いている私と妹も『霊感体質』であることを考えると(姉は全くのゼロ感ですが)、
そういう家系・血筋、なのでしょう。


























とても有難い御方に護られていらっしゃるのですね
とても優しいお方でよかったですね^ ^