フィルム缶に入っていたもの
投稿者:take (96)
上司のSさんに聞いた話です。
バイクや釣りと趣味の多い人ですが、カメラも好きで、高校時代は写真部に入っていたそうです。
昭和の話なので、銀塩とかフィルムの時代です。
部室に置いてある大型のスチール棚に、大量の機材やフィルム缶が並べられていました。
一番下の棚の奥に、何年も開けるどころか、1ミリも場所を動かしていないような、錆の浮いた古ぼけたフィルム缶がありました。
Sさんは以前から「何が入ってるんだろう?」と思っていたのですが、なんだかんだでそのままになっていたそうです。
ある日、部室でたまたま1人で棚の整理をしていた時に、そういえば、と思い出し、例のフィルム缶を手に取りました。
埃まみれで錆だらけで、10年以上前のものに思えました。
錆びついて固くなった蓋を苦労して開けてみると、中には数枚の写真とフィルムが入っていました。
その写真は、人物や風景などのありふれたスナップ写真でしたが、写っている人物の首や腕や足が消えていたり、女生徒が2人並んでいるその間から、生きている人間とは思えない顔が覗き込んでいたり、池の上に半透明の人影が写っていたり、集合写真の全体に覆っている白いモヤの中に人の顔のようなものが無数に浮かび上がっていたり……。
一緒に入っているフィルムはその写真のものでした。
俗にいう『心霊写真』のようなものばかりだったそうです。
気味悪くなったSさんは写真を中に入れて、元の場所に戻しました。
そのまま誰にも言わず、滞りなく部活動を続け、卒業したそうです。
「今考えれば、お寺にでも持って行って供養してもらったほうが良かったかな、もういまはどうなってるのか知らないけど」
Sさんがそう言うので、
「プロの写真家は心霊写真を撮らないんでしょ? 僕はカメラは素人なんでわかりませんけど」
私が訊くと、
「高校生の部活動だよ、素人と変わらないよ」
と、Sさんは豪快に笑っていました。
写真部で心霊写真が撮れたなんて話はかなりあるじゃないでしょうか。表沙汰されていないだけで。
写真は如実にセンスがでますよね。
良い上司さんそうですね。