交差点に差し掛かると、俺の前にいた小学生くらいの男の子が、赤信号にも関わらず道路を渡ろうとしていた。
俺は思わず
「危ない!」
と叫んで子供の腕を引っ張った。ほんのわずかなところで俺も子供も車に轢かれるところだった。
しかし、そのはずみで転んだ時に、頭をどこかに打ちつけてしまった。
「子供は…子供は無事か…?」
それが気を失う前の最後の言葉となった。
気が付いて目が覚めると、そこはどこかの病院のベッドの上だった。
体を起こして部屋を見渡していると、自分の身に何が起こったかを思い出そうとしていた。
そうしていると、ガラガラと病室のスライドドアが開いた。
入ってきたのは山田さんだった。
「おお、目が覚めたのか。良かった良かった。本当に良かった。」
俺は目が覚めてはいたが、頭がまだ追いつかなかった。
しかし、あの日の出来事を思い出して状況を把握しないといけない。
「…先輩、お見舞いありがとうございます。そう言えば、あの時の子供って大丈夫だったんですか…?」
「子供?何の事だ?」
「…先輩と飲んだ帰りですよ…。道路を赤信号で渡ろうとした、あの子供ですよ…。」
「お前何を言ってるんだ?子供なんていなかったぞ。しかも飲み会の帰り?昨日…いや、おとといか。お前と一緒に行った営業の帰りの事だよ。」
「そんなバカな…。」
そもそも開発部の俺と先輩は営業に行く事はほとんど無い。無いはずだ。
「大丈夫か?いや、確かにお前は転んで頭を打ったよ。そもそもお前が赤信号で渡ろうとしたんだ。それを俺が止めたんだぞ。」
「いやそんなはずは…。」
「お前を止めようとした時に転んで、うまく避けられなくて確かにお前は頭を打ったんだ。」
「俺が赤信号を渡ろうとした…?」
目が覚めたばかりのせいか、記憶が混乱しているのかもしれない。山田先輩は嘘など言うような人じゃないが、俺の記憶とはかなり違うから、先輩の言葉で混乱に拍車がかかっていた。
そうしているうちに、巡回の医者が看護師と一緒に病室に入ってきた。どうやらこの医者が俺の担当のようだ。
「ああ(俺)さん、やっと目が覚めたようですね。安心しました。」
「やっと?やっとというのはどれくらいの時間、俺は眠ってたんですか?」
「そうですね…。確か今日でちょうど1週間…ですね。」
俺は思わず
数年前に、これと少し似た話を書き込んだことがあるので、もしかしたらそれを読んだ方がいるかもしれません。その時は占い師ではなく、喪●福蔵でしたが。
作者より
ネット廃民ほどおもろい滑稽な存在はいない