海水浴
投稿者:マイアミ (2)
その時、思い出したのです…。
私が目覚めたときにみた風景が、生まれてから小学2年生まで住んでいた家の近くの海だったことを。
私は、必死にそのころの記憶を呼び起こしていました。
いつも同じクラスの何人かで海に行っていた私たち。
どこに行くにも、必ず一緒に行動していた男の…。
私は、手を引っ張っている男の子の顔をよく見ました。
その顔は、その男の子だったのです。
私が高校生ということは、その子も高校生になっているはず…。
息が続かなくなってきた私は、もうろうとする意識の中、心の中で、その男の子に問いかけました。
「〇〇か…?」
すると、その男の子がこっちを振り向き、笑顔を見せ、手を放しました。
そして、海の中で、言葉は聞こえないはずなのに、こう聞こえたのです。
「やっと思い出してくれたか…。俺はお前に会いたくて仕方なかったんだぞ…、ツムツム」
その言葉に、私はハッとしました。
ツムツムというのは、昔遊んでいたその子と決めた、お別れのときに使う合言葉だったのです。
「思い出してくれてありがとう…。一緒に連れていきたかったけど、お前は生きろ。海には気をつけろよ。」
そう言って、その男の子は消えました…。
気が付くと、私は砂浜にいました。
いつもと変わらない風景です。
しばらくすると、友人たちも戻ってきて、青ざめた私の顔を見て、
「どうしたんだ?おぼれたのか?顔色悪いぞ。」
そう言って、予定よりも早めに帰ることになりました。
家に帰ると、引っ越してからも、元住んでいたところの人と連絡をとっていた母親から、信じられない話を聞くことになったのです。
私を海に引きずり込んだあの子が、海で事故にあい亡くなったと。
母が聞いた話によると、慣れているはずの海で、サーフィンをしていたところ、カメに間違えたサメに噛まれて亡くなったとのことでした。
その子の葬式に行くと、その子の母親から、
「来てくれてありがとう。あの子、あなたが引っ越してから、あなたに会いたいって、ずっと言っていたの…。一緒にサーフィンするんだって…。高校生になったら会えるんだって…。どこに行くのも一緒だったものね、あなたたち…。」
それを聞いて私は、その子が私を連れて行こうとした理由がわかりました。
引っ越す日、その子と約束していたのです。
離れていても、ずっと一緒だぞと…。
高校生になったら、戻ってくるから、一緒にサーフィンしようって
その時までに練習しとけって。
その約束を守り、練習していた時の事故で死んでしまったのに、その子のことすら忘れてしまっていた私に怒っていたのでしょう。
一緒にいるという約束は守らせようとしたのでしょう。
いくらなんでも海の中に引き込むことはないでしょ。