約束の手紙の再会
投稿者:ぴ (414)
数十年前のことなのですが、私の隣の家にはとても優しそうな夫婦が住んでいました。
まだ子供だった私を見つけると話しかけてくれたり、一緒に遊んでくれたり、お菓子をくれたりするような優しい人達でした。
私はその二人がすごく好きで懐いていたのです。
二人にはずっと子供ができなかったらしく、私を自分の子供みたいに可愛がってくれていたように思います。
うちは貧困家庭で、両親とも共働きだったので、よく、学校から家に帰ってくると構ってくれたその夫婦のところにいきました。
誰も家にいない寂しさを、二人に紛らわせてもらっていました。
私にとっての二人は両親よりも両親でした。
本物の両親よりも愛情をくれたし、いろんなことを教えてくれました。
だから二人が引っ越ししてどこか遠くに行くと聞いたときは本当に大泣きして別れを悲しみました。
あまりに私が泣くので、困った夫婦は私に手紙を残してくれました。
それは私が大人になったらまた会いにくるというようなことが書かれた優しい手紙でした。
私はそれを支えにして辛いことがあっても、乗り越えてこられたと思っています。
実は私の両親はあまり子供に関心がない人たちでした。
貧困家庭だったけど、原因は両親の浪費癖なのです。
ギャンブルが好きで、働いたら全部それにつぎ込んで、借金はいつまで経っても無くなりません。
そんな本物の両親からはあまり愛情を感じませんでした。
私よりもずっとパチンコやスロットを愛していたし、時間があれば子供と遊ぶ、なんてことするはずもなく、ギャンブルに夢中でした。
だから、ただの隣人だったその夫婦の無償の愛情がとても嬉しく感じて、記憶に残りました。
こうして私はその手紙を心の支えにやってきたのですが、悲しいことに高校を卒業しても、二十歳の誕生日を迎えても、社会人になっても、夫婦は私に会いにきてはくれませんでした。
手紙をずっと大事にして何度も読み返していた私にはそれが一番悲しかったです。
夫婦はずっと私に優しかったので、いつか絶対に会いにきてくれると信じていました。
だけど無情にも二人は私の前に一度も顔を出さず、待っていることも悲しく感じてしまうようになりました。
寂しくなると読み返したあの手紙もいつしか寂しさが増すだけなので、読み返さなくなりました。
その手紙は机の一番奥に仕舞い込み、私は少しねじくれた人間になり、心を閉じてしまったのです。
私は30代を迎えた誕生日の日に、いつものようにポストから取り出した郵便物の中に手紙を見つけたのです。
それは見たことがある封筒で、胸がざわっとしました。
そう、あの夫婦が私に渡してくれたお手紙と同じ柄の封筒だったのです。
すぐに、奥にしまってあった手紙を引っ張り出して見比べて、同じものだと確信しました。
あまりの懐かしさに思わず手が震えたし、あて先を見て懐かしい名前に自然と涙が出ました。
涙が出て初めて、私はこの人たちがどれだけ大きな存在だったかを知りました。
心温まるお話でした。
老夫婦に出会えて良かったですね。
いいお話ですね。情景を思い浮かべたら涙がでてきました。