忘れられないクリスマス
投稿者:いももち (40)
ある年のクリスマス、大学の先輩のアパートでパーティーをすることになりました。
男女合わせて5、6人ほどで近くのスーパーで食材を買って鍋を作り、各自持ちよったお酒も進み、先輩が内緒で用意してくれていた大きなホールケーキも平らげた頃にはすっかり夜も更けていました。
みんなお腹いっぱいで眠く、口数も減りはじめた状況を盛り上げようとしたのか、同じ学年の元気な女の子が「怖い話しましょう!」と言い始めました。
クリスマスにすることじゃないだろうというツッコミを無視して女の子が話はじめたのを遮るように、家主の先輩が「怪談はやめてくれ」と言いました。
先輩怖いのダメなんですか?とからかい気味に女の子が聞いても「別に怖くないけど駄目だ」の一点張りで、面白がった女の子がもう一度怪談をはじめた途端、ベコッ!と大きな音を立てて空のペットボトルがへこみました。
飲み終わって部屋の隅に追いやられていたものなので誰も触っていません。凍りつく私たちをよそに「だからやめろって言っただろ」と先輩は全く動じていません。
「隠してて悪かったけどうち事故物件なんだ」
ほら、と先輩が衣装ケースをずらすとそこだけフローリングが新しくなっていました。
「普段はなんの害もないけど、オカルト系の話とか映画を観るとだめなんだ。夏にうっかり心霊系のテレビをつけっぱなしにしてたら髪の毛が燃える臭いがしてさ」先輩は淡々とつづけます。
「たぶん女の子の霊だと思うんだよな。他のお化けなんてみないで!ってやきもち焼いてるんだと思う」「でも彼女も何回も泊まりに来てるけど何もされないから大丈夫だよ」と本気か冗談かわからないことを言う先輩に言葉が出ませんでした。
帰りたくなっても終電もなく、タクシーを呼ぶ経済力もない私たちは朝までひたすらお笑いの動画を観てわざとらしい高笑いを続けるしかありませんでした。
いろいろな意味で忘れられないクリスマスになりました。
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