先に行っておいて

その日の前日は夫が出張に出かけ、2泊3日で帰ってくる予定でした。

私は久しぶりに自由きままに過ごしていました。

朝は息子を幼稚園に送り届けてバタバタしていましたが、それが終われば息子を迎えに行くまでに時間があったので、家でゴロゴロと過ごせたのです。

たまにはこういう日があってもいいなと内心喜んでいました。

だけど、そう思いながらも少しだけ気がかりがあったのです。

私は朝から何もしていないのになぜか疲れていました。

昨日何かをしたわけでもないし、その日も特に変わりなく、いつもどおりに家事をこなしただけなのです。

なのに朝からずっと、半日くらい山登りでもしたかのごとくぐったりと疲れていて、おかしいと思いました。

強い睡魔にも襲われて、我慢できなくなって私はお昼を過ぎた頃に少し眠ることにしたのです。

うつらうつらと軽く眠るつもりが、起きたら結構時間が経っていました。

起きてみるとやっぱりまだ疲れが取れていなくて、なんでこんなに疲れているんだろうと我ながら不審に思いました。

あとぼんやりとですが、何か夢を見た気がしたのです。

その夢は起きた直後にさっぱり忘れてしまいましたが、なんとなく覚えていないといけなかったような気がして、ずっと落ち着きませんでした。

何度も何度も夢を思い出そうとしたけど、どんな夢だったのかがまったく思い出せません。

もう思い出そうとするのを諦めようかと思ったときに、ふいに「先に行っておいて」という言葉が思い浮かんだのです。

私はそれを何度か頭の中で繰り返しました。

だけど、その言葉が何なのかまったく分からなかったです。

でも私は本能的にその言葉を何度も頭の中で繰り返していました。

そのときは何も思わなかったのですが、後で考えたらまるで忘れないように、必死で覚えようとしているような行動でした。

そしてしばらくぼーっとテレビを見たりしていたのですが、なぜかその日のテレビはどれも見覚えがありました。

ニュースもなぜか見たような気がしたし、チャンネルを変えたら殺人事件のドラマをしていて、それもなぜか見覚えがありました。

見たようなテレビをずっとやっているのですが、これをどこで見たかと聞かれたらそれは思い出せません。

なんだか変だなとずっとぽやぽやしていました。

それで洗い物の片づけをしたりしていたら、気づいたら息子を幼稚園に迎えに行く時間でした。

息子を幼稚園に迎えに行こうと慌てて車に乗ったら、肝心な車の鍵を忘れてきたことを思い出しました。

急いで家まで取りに行って、「あれ？」て思ったのです。

なんだか同じことをした覚えがあるような気がしたのです。

その後も運転中に信号が何度も赤になるのも既視感があったし、3つ目の信号をまっすぐ進んでいたら横道から猫が飛び出してきたときも、なぜか私にはそれを以前見た覚えがあったのです。

猫が飛び出してくるなんてそうあることでもないし、いつあったことなのか思い出せないのが不審でした。

今日あるすべてのことがデジャヴュに思えて、落ち着かなかったです。