血色の悪い足の患者
投稿者:ぴ (414)
落ち着くはずの家が落ち着かなくなったし、自分のテリトリーを荒らされている気分になりました。
多分、あの病院での出来事がきっかけなのです。
あそこで何かを拾ってきた気がしてなりませんでした。
私は拾ったものは元の場所に返してきたほうがいいと思ったのです。
だから胃腸の調子が悪いと嘘をつき、もう一度その病院を受診してみたのです。
そうすれば何か変わるかもしれないと思ったのがきっかけでした。
朝起きて職場に「今日は休みます」と連絡を入れました。
職場の人は最近血色の悪い足を見るせいでずっと顔色が悪かったので、気持ちよく病院に送り出してくれました。
病院に行く前に、いつものようにゴミ出しをしようとしてかがんだら、見えたそれにぎくっとしました。
置かれているごみの横に足が見えたのです。
いつもの血色の悪い足でした。
誰の足かとおそるおそるその足の上を確認しようとしたら病衣姿でした。
そうあの病院で見たものと全く同じものがそこにいたのです。
そろそろやばいと思って、そこから走って逃げました。
午前中に勇気を振り絞って、あの病院に再び入ったとき、私が感じたのは寒気でした。
病院の自動ドアがぱっと開いた瞬間、酷く温度が下がって空気が冷たくなったと感じました。
その時期はぽかぽか温かい春だったのに、病院に一歩入るとまるでクーラーでも効かせているかのように寒くなりました。
ぞくぞくしながらいつもの待合室で待っていると、隣に誰かが座りました。
私はそれにびくっとしたのです。
だってあの青ざめた足元が見えて、いつもの人だと分かったからです。
病衣をまとった人が隣に座っていて、私は思わず鳥肌を立たせてしまうくらいドキドキしました。
怖くてしばらく俯いて震えながらあの血色の悪い足を見ていたのですが、そしたら突然向こうから話しかけてきたのです。
そのとき初めて分かったのですが、相手は男の人でした。
声が低かったですから。
話の内容はごく普通の世間話なのですが、よくよく聞いたらおかしいところがいくつもあります。
話している内容が最近のニュースの話ではありません。
一昔前のニュースのことを話題にしていました。
数年前の話なので、私も記憶が定かではなく、ただ相槌を打つだけでした。
だけど一通り話をしたらスッキリしたのか、「じゃあ私は病棟に行くので」と去っていったのでした。
その人がいなくなるまで、私はずっと震え続けていました。
ご冥福をお祈りします。