僧伽(サンガ)
投稿者:四川獅門 (33)
そして高校を卒業した紀子さんは、家族と縁を切り、元夫の部屋に転がり込んだのだった。
紀子さんは両親に「ミヤノユキ」について話した。
「経を上げに行くぞ。忘れてないだろうな」父が紀子さんに言った。
「うん」
「母さんは新一を頼む」
紀子さんの母親はこくりと頷いた。
紀子さんは父親と2人、踏切へと歩き出す。父親と2人で外を歩くのは、妙な気分だった。
踏切の献花の前に立ち、2人は読経した。
アパートに帰ると、新一君はすやすやと眠っていた。
「新一は、お前以上に見えてるみたいだな。このままじゃ苦労するぞ」
父が言った。
「うん」
「新一を連れて、帰って来たらどうだ?」
紀子さんは急な父の提案に驚いた。
「……考えておく」
紀子さんはそう言って、両親を見送った。
疲れきった紀子さんは新一君の隣で眠りについた。
そして、夢を見た。
夢の中、紀子さんは遮断機が降りた踏切の前に立っていた。警報機がカンカンと鳴る。
踏切の向こう側には女の子が立って泣いている。
紀子さんがお経を唱えると、ゴーっと音を立てて電車が走った。
電車が走り去ると、線路があった場所は川になっていて、河原には沢山の花が咲いていた。
女の子は紀子さんに背を向け、川の向こうへ消えていった。
目が覚めると、紀子さんは泣いていた。隣で寝ている新一君も、涙を流していた。
それ以来、ユキちゃんが現れることは無かった。
20年後、2020年
山梨県 七面山
霊山の中、瀧に打たれる僧がいた。
その名は桐島新一。
七面山ということは日蓮宗か。
私も坊さんやっておるけども(日蓮宗ではない)、こういう話は身の回りで聞くことがある。
この手の話は仏教の教義柄、対外的には公言されないけども、お寺の世界なら、このエピソードは実話でもおかしくないくらい有り得る話。
1番上のコメント主様へ。
お坊さんが、このような話を読まれている事に少し驚きました。お読み頂いてありがとうございます。
七面山が日蓮宗というのも、書いた私自身、知りませんでした。大変勉強になりました。
先日、宗教は違うのですが、加持祈祷に救われました。
神や、仏につかえる方々には感謝や尊敬の意があります。
この場を借りて、お礼申し上げます。
する夫