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心霊

四川獅門さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

僧伽(サンガ)
長編 2021/02/26 08:44 28,152view
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そして高校を卒業した紀子さんは、家族と縁を切り、元夫の部屋に転がり込んだのだった。

紀子さんは両親に「ミヤノユキ」について話した。

「経を上げに行くぞ。忘れてないだろうな」父が紀子さんに言った。

「うん」

「母さんは新一を頼む」

紀子さんの母親はこくりと頷いた。

紀子さんは父親と2人、踏切へと歩き出す。父親と2人で外を歩くのは、妙な気分だった。
踏切の献花の前に立ち、2人は読経した。

アパートに帰ると、新一君はすやすやと眠っていた。

「新一は、お前以上に見えてるみたいだな。このままじゃ苦労するぞ」
父が言った。

「うん」

「新一を連れて、帰って来たらどうだ?」

紀子さんは急な父の提案に驚いた。

「……考えておく」

紀子さんはそう言って、両親を見送った。
疲れきった紀子さんは新一君の隣で眠りについた。
そして、夢を見た。

夢の中、紀子さんは遮断機が降りた踏切の前に立っていた。警報機がカンカンと鳴る。

踏切の向こう側には女の子が立って泣いている。
紀子さんがお経を唱えると、ゴーっと音を立てて電車が走った。
電車が走り去ると、線路があった場所は川になっていて、河原には沢山の花が咲いていた。
女の子は紀子さんに背を向け、川の向こうへ消えていった。

目が覚めると、紀子さんは泣いていた。隣で寝ている新一君も、涙を流していた。
それ以来、ユキちゃんが現れることは無かった。

20年後、2020年

山梨県 七面山

霊山の中、瀧に打たれる僧がいた。

その名は桐島新一。

9/10
コメント(2)
  • 七面山ということは日蓮宗か。

    私も坊さんやっておるけども(日蓮宗ではない)、こういう話は身の回りで聞くことがある。

    この手の話は仏教の教義柄、対外的には公言されないけども、お寺の世界なら、このエピソードは実話でもおかしくないくらい有り得る話。

    2021/02/26/10:11
  • 1番上のコメント主様へ。
    お坊さんが、このような話を読まれている事に少し驚きました。お読み頂いてありがとうございます。
    七面山が日蓮宗というのも、書いた私自身、知りませんでした。大変勉強になりました。
    先日、宗教は違うのですが、加持祈祷に救われました。
    神や、仏につかえる方々には感謝や尊敬の意があります。
    この場を借りて、お礼申し上げます。

    する夫

    2021/02/26/10:29

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