僧伽(サンガ)
投稿者:四川獅門 (33)
紀子さんは踏切へと走り出した。
カンカンと音がなり、遮断機が降りる。
ゴーと音を立てる電車が、紀子さんと新一君を遮った。
電車が去り、ゆっくりと遮断機が上がる。
新一君がフェンス越しに座りこんで、何かをしている。女の子はいない。
紀子さんは気づいて、戦慄した。頭が真っ白になって。叫んだ。
「やめてええええ!!新一!!」
新一君はフェンスに沿って置かれた献花の前に座り込み
お供え物のお菓子を頬張っていた。
紀子さんは新一君に駆け寄り、その両肩を掴み、喚いた。
「何してるの!!これが何だか分かる!?これは新ちゃんのお菓子じゃないの!!どうしてこんな事したの!!」
泣きながら、問い詰める。
「……ユキちゃんが、食べていいって。」
新一君もポロポロと泣き出した。
紀子さんの頭に、いつかの記憶がよぎる。
『 ユキちゃんとお菓子食べてお腹いっぱいになっちゃった。ごめんなさい』
紀子さんは絶句した。
「ちょっとあなた」
後ろから声をかけられた。振り返ると怪訝な顔をした中年女性が立っていた。
「遺族の方?」
女が聞く。
「いえ、違いますけど」
「あら、そうなの?アタシ、そこの家に住んでるんだけどね、正直困ってるのよ」
女が話し出した。
「もう3年くらい前の事故なのに、ずーっとお菓子やら飲み物やら、花束やら、風で散らかったりして迷惑してるのよ」
「そうでしたか」
では失礼しますと立ち去ろうとしたが、女は強引に話を続ける。
「女の子がね、飛び込んだのよ。なんでも虐待されてたとか」
「やめて下さい!子供の前でそんな話!」
七面山ということは日蓮宗か。
私も坊さんやっておるけども(日蓮宗ではない)、こういう話は身の回りで聞くことがある。
この手の話は仏教の教義柄、対外的には公言されないけども、お寺の世界なら、このエピソードは実話でもおかしくないくらい有り得る話。
1番上のコメント主様へ。
お坊さんが、このような話を読まれている事に少し驚きました。お読み頂いてありがとうございます。
七面山が日蓮宗というのも、書いた私自身、知りませんでした。大変勉強になりました。
先日、宗教は違うのですが、加持祈祷に救われました。
神や、仏につかえる方々には感謝や尊敬の意があります。
この場を借りて、お礼申し上げます。
する夫