落ちてくる狸の置物

高校生からお付き合いがある友達は、ちょっとしたマニアックな趣味がありました。

それは置物コレクターというもので、置物を収集したり、飾ったりすることが好きでした。

その収集癖の為、友達の家にはかなりの量の置物がありましたが、私は特に気にしませんでした。

というのも身内だったら「やめてよ」と注意する類だったかもしれませんが、友達なので好きなようにすればいいと思っていたからです。

それで、その趣味を止めたり深刻になって注意したりすることはありませんでした。

その友達は、社会人になってからより一層、置物を収集することに情熱を注ぎます。

でもこの年齢になると、自分で働いて貯めたお金で何を買うのも自由だろうと思い、友達のコレクター趣味には一切口を出さなくなりました。

そんな風に付き合いが長かった友達が北海道旅行のお土産にと私に買ってくれたのが、狸の置物でした。

狸の置物といっても、キャラクター的な可愛らしいたぬきではありません。

もうリアルな実際にいるような狸が、鮭のような魚を咥えている木彫りの置物なのです。

もらったときはへんてこな置物に内心ちょっと困りました。

しかし、そこまで大きなサイズじゃなかったこともあり、まあいいかと部屋のテレビ台の上に飾っておきました。

狸の置物をもらって、しばらくは特に何事もなく過ごしていました。

だけど、半年くらい経ってからだったでしょうか。

急に頻繁にこの狸の置物が勝手に落ちてくるようになったのです。

テレビを見ていたら、特にテレビ台を動かしたわけでもないのに、テレビ台の上から置物が落ちました。

それを拾って起き直したのに、それから数十分も経たない内にその置物がまた落ちてきたのです。

このときは窓を開けていたので、風で倒れたのかなと思って、大して気にはしていませんでした。

二度目は窓も開けてない深夜のことで、そろそろ寝ようかなと布団に入ろうとしたときに、テレビ台の近くで物音がしたのです。

「ガタン」という音がして、驚いてそちらを見ると、あの狸の置物でした。

また倒れたのかとすぐに拾いにいきました。

その日は夜なので窓も開いていなくて、何で落ちてきたんだろうと思ったのです。

ついつい不思議に思って狸の置物の足元を確かめたけど、特に変わりはありませんでした。

狸の置物を元あった場所に戻してから、就寝しようと電気を消しました。

そして電気を消して朝を迎えてから、何気なくテレビ台を見てみると、またあの狸の置物がひとりでに落ちて倒れていたのです。

この日はおかしいなと思いながらも、そこまで気に留めていませんでした。

置いた位置が悪かったのかもしれないと思って、気にかけませんでした。

この置物が倒れる現象を怖いと思い始めたのは3回目の出来事を体験してからです。

その日私は家に人を泊めていました。

その子は学生時代のホームセンターのバイトで知り合ったお友達でした。