婚活パーティーの帰りに
投稿者:ねこじろう (147)
その日俺は夕刻から、都内某ホテルが主催する婚活パーティーに参加した。
普段着なれないスーツで身を纏い、気合いを入れて出掛けた。
定刻より少し遅れて会場に入ると、既にパーティーは始まっていた。
20歳から40歳までの男女50名が、ホテル地下にある宴会場に一同に会している。
ホール内のあちこちには丸テーブルが配置され、その上に様々な料理や飲み物が置かれており、男性も女性も思い思いの場所に立ち、お互いに談笑しあっていた。
前月40歳になってさすがに焦りを感じだした俺は、それまでも何度となく婚活フェスに参加してきた。
だが現実はそんなに甘くはなく連敗記録を更新中だった。
既に相手を選べるような年齢ではないことを悟っていたから、その日も片っ端に女性に声をかけていく。
だが元々コミュ障気味で根暗な俺が今更頑張って気の利いた会話をしようとしても無理な話で、やはり1回たりとも盛り上がることはなく時間だけが虚しく過ぎていき、とうとう閉会となった。
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ホテルを出た時は既に日が暮れていて、辺りは薄暗くなっていた。
俺はすぐに帰る気にはならず、何とはなしに近くにある広い公園に立ち寄る。
人気のない公園のブランコに座り、しばらくゆらゆらと前後してみたが、ちっとも心が晴れないので止めた。
それから役目を終えた遊具たちを横目にグランドを抜け、その先にある林に進んでいく。
曲がりくねった薄暗い遊歩道を街灯を頼りに一人とぼとぼ歩いていると、情けないことに突然下っ腹が痛みだした。
─普段食べ慣れない料理で、お腹が驚いたのかな?
焦りながら辺りを見回すと、100メートルほど前方に、街灯に照らされポツンと公衆トイレがある。
俺はダッシュすると、慌てて男性用に駆け込んだ。
そこはお世辞にも清潔とは言えないような、薄汚れた所だった。
タイル張りの床は変色しており、天井の蛍光灯は切れかけていて、断続的に点いたり消えたりを繰り返している。
そこをめがけて一匹の蛾が愚かな衝突を繰り返していた。
個室は右手に3つあった。
ただ奥の1つは閉まっており、【故障中】という貼紙がしてある。
あとの2つの扉は開いていた。
俺は真ん中の個室に入った。
何とか用を足すことができ、洋式便座に座ったままホッとして顔を上げると、扉に落書きがあることに気づく。
天井の蛍光灯が点灯と消灯を一定間隔で繰り返す状況で読みづらかったのだが、何とか頑張って読んでみた。
それは角張った癖のある字で、黒のボールペンで書かれていた。
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わたしは今年40になる女です。
ヒトコワじゃないじゃん!!
呼出音は聞こえなかったのですか?
↑ホントそれ!汚い公衆便所で失神する投稿者さんを想像しただけで大変気の毒で何より。
尻は拭いていたのですか?
トイレのドアを見て電話しています。で、吹いた。