短編
2022/12/03
00:51
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そこは8帖ほどのリビングなんだが、がらんとしていて人の気配が全くない。
隣の和室に続く襖は閉じられていた。
「S、そこにいるのか?」
そう言いながら、俺はゆっくり襖を開けていく。
そして目前の光景に思わず息を飲んだ。
真っ先に視界に入ったのは、
薄暗い部屋の中央にポツンと浮かぶ、見慣れたチェック柄のシャツを着た背中だった。
そしてそれがどういう状況なのか分かった瞬間、俺は情けない叫び声をあげながらドスンと尻餅をつく。
和室の天井から一本の粗縄が伸びている。
その先の輪っかに首を通したSがこちら背中を向けて、ゆっくり回転していた、、、微かに軋む音をさせながら。
そしてさらに、
Sの足下の畳に視線を移動したとたんに、一瞬で俺の全身は凍りつき、ガタガタと両膝が震えだす。
そこには、
1台の掃除機。
そしてその傍らには、
大の字になって仰向けに横たわり、顔だけをこちらに向ける全裸の女。
両目と口をぽっかり開いている。
よく見るとそれは行方不明になっているTさんの変わり果てた姿だった。
彼女は透明の大袋に入れられており、まるで真空パックされた食材のような状態で圧縮されていた。
【了】
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