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ヒトコワ

ねこじろうさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

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短編 2022/12/03 00:51 6,016view
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すると玄関の呼び鈴が鳴った。

ドアを開けると、そこにはジャージ姿の初老の男が立っている。

アパートの大家だった。

「朝からすみませんねぇ。ちょっとお聞きしたいことがあるのですが、よろしいですか?」

頷くと、大家は申し訳なさそうに頭をかきながら話し続ける。

「実はお隣のTさんのことなんですが、何度となく呼び鈴を鳴らすのですが出てこられないんですよ。恐らく不在にされているのだと思うのですが、前月の家賃滞納されてるんですよ。
会社の方からも度々問い合わせがありまして、それで私らもちょっと困ってるんですわ。
何かご存知ないですかね?
先週は二つ隣のSさんにもお聞きしたのですが、知らないということだったんですわ」

「ええ私も長く部屋を空けられているのは、気付いてました。ただ消息については申し訳ないのですが、分かりません」

俺は正直に答えた。

大家はしばらく腕組みして考えている様子だったが、やがて、

「分かりました。
もし何かありましたら、私の方に連絡ください」

と言い、連絡先を書いたメモを俺に手渡すと立ち去った。

この後またしばらくソファーで寛いていた俺は、近くのコンビニに昼御飯でも買いに行こうと部屋を出た。

渡り廊下を真っ直ぐに歩く途中、何とはなしに気になり、Sの部屋の呼び鈴を鳴らしてみる。

返事はない。

ドアノブを回してみると、ドアは容易に開いた。

彼ともしばらく会っていなかったから、俺はドアの隙間から声をかけてみた。

「おい、Sいるか!?」

玄関口に、いつも履いているスニーカーとサンダルが一つずつあるのが見える。

不審に思った俺はドアを開けると、奥の部屋に向かってもう一度声をかけてみた。

「おい、S!?」

やはり返事がない。

何故だろう胸の中が妙にざわつく。

いけないこととは思いながら俺は靴を脱ぎ廊下に上がると、真っ直ぐ奥に進んでドアを開く。

何も置かれていないダイニングテーブル、

画面が真っ暗な液晶テレビ、

誰もいないソファー。

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