ありがとうを伝えに
投稿者:ウニウニ9689 (4)
それから半年の間、8回ぐらいのお泊りがありました。ラーメン屋さんの店主さんが作ってくれた私たちにピッタリサイズのラーメンを食べたり、お兄ちゃんと一緒に色々な事をしたりして、楽しい日々を過ごしました。
しかし、その後はいくら父親に言っても、市場、それから奈美ちゃんの所に連れて行ってはもらえなくなりました。行きたいと駄々をこねても、「市場に行かなくなったんだよ。ごめんね。」と父親に言われてしまい、諦めるしかありませんでした。
それから2か月ぐらいがたち、父親が「今日、市場に行くけど、お泊りは出来ないからね。奈美ちゃんとは会えないかもしれないけど、一緒に行く?」と言いました。
私は市場に行ける事がひたすら嬉しく、何も考えず、父親のトラックに乗りました。
しかし、市場に到着した時には、奈美ちゃんは居なく、奈美ちゃんのお父さんが
「みっちゃん、奈美、来てないんだよ。もうこれなくなっちゃったんだ。ごめんね」と。
奈美ちゃんに会えないのか、と残念に思いながら、父親のトラックが見えるところで、父親の仕事が終わるのを待っていました。
1人さみしくじっと待っていると、事務所の方に向かう子供の姿が見えたので、「奈美ちゃん?」と思い、私は追いかけて行きました。
事務所に着くと奈美ちゃんがいました。
「奈美ちゃん」と声をかけると、奈美ちゃんは振り向き「みっちゃん、一緒に絵本読もう」と。
私が来たことを聞いた奈美ちゃんが来てくれたのだと思っていた私は、そのまま奈美ちゃんと絵本を読んでいました。
しかし、奈美ちゃんは突然、「みっちゃん、ありがとう。奈美のお友達になってくれて、遊んでくれて」と言って、目の前から消えてしまったのです。
びっくりしてしまった私は、駆け出し、父親の元に行き「奈美ちゃんが消えちゃったの‼いなくなっちゃったの」と訴えました。
それを聞いた父親は「よく聞いてね。奈美ちゃんは天国に行っちゃったの。だから、もう会えないし、遊べないんだよ」と私に言いました。しかし、理解できなかった私は、「さっきまで一緒に遊んでたよ。ありがとうって」と泣き出してしまいました。
父親になだめられ、トラックに乗って帰る時、出入り口に奈美ちゃんがいて、手を振っていました。
それが、奈美ちゃんとの最後でした。
トラックの中で父親は
「奈美ちゃんね、病気で長くは生きられなかったんだって。奈美ちゃん、幼稚園にも行けなくて、お友達もいないって奈美ちゃんのお父さんに聞いたから、みっちゃんと仲良くできたらな?って、みっちゃんなら奈美ちゃんのお友達になれるだろうって」
「ごめんね。つらい思いをさせて。でも、奈美ちゃんはみっちゃんにお礼が言いたくて、みっちゃんの前に現れたと思うから、怖がらないでいてあげてね」と私に話しました。
これ以降、私が市場に行くこともなくなり、奈美ちゃんに会うこともなくなりました。
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