ありがとうを伝えに
投稿者:ウニウニ9689 (4)
これは、私が5歳ぐらいの頃に体験した不思議な出来事です。
私の父はトラックの運転手をしていて、私は、父親のトラックに一緒に乗っていくことが多かったのです。
小さな女の子が父親と一緒にやってきて、仕事を手伝っている姿がほほえましかったようで、行く先々で可愛がってもらいましたが、出会う人の殆どは大人でした。
父親の行き先の一つにとある市場がありました。市場には1か月に数回荷物を運んでいましたが、私はそれまで、そこに行ったことはありませんでした。市場は忙しく、子どもが一緒だと迷惑になると言うことで、連れて行ってもらうことは出来なかったのです。
ですが、ある日から突然その市場へも連れて行ってもらえることになったのです。
どうしてかな?と思いつつも、連れて行ってもらえることの方がうれしかったので、深く考えることはありませんでした。
その日父親は市場へ向かう途中、「着いたら食べるんだよ」とたくさんのお菓子を買ってくれました。
市場に着くと、父親は私を連れてまっすぐ市場の事務所に連れて行きました。
そこには同じ年頃の女の子と、その子の両親らしき人、市場の偉い人がいて、市場の偉い人が「危ないところで遊んではいけないけど、仲良く遊んでね」と言って去って行きました。
どういう事?と思っていると、女の子のお母さんが「みっちゃん(私の事)、この子と一緒に遊んでくれる?」と言ってきたので、
父親の方を見てみると、父親が「今日は奈美ちゃんと遊んで待っていられる?危ないから走り回らないで、このお部屋で一緒に遊んでいられる?」と。
家の近所以外のお友達が初めて出来る!と喜んだ私は「うん」と元気いっぱいに答えました。
女の子の名前は「奈美ちゃん」と言い、同じ年で両親がこの市場で働いていると言うことが分かりました。
その日は、事務所でお絵描き、折り紙、絵本を読むなどして楽しく過ごし、私と奈美ちゃんはあっという間に仲良くなりました。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、父親が積込を終え迎えに来たのですが、凄く楽しかった為、中々帰ることが出来なかったのです。
すると奈美ちゃんのお母さんが
「今度来るとき、おばちゃんの所に泊って、朝お父さんに迎えに来てもらうようにしよう。」と言ってくれたので、次の約束をして帰りました。
家に帰ってからは父親に
「次はいつ?いつ奈美ちゃんの所に行ける?」と何度も聞きました。
しばらく後、やっと市場へ行ける時がきました。母親にお泊りセットを作ってもらって出発しました。
その日はトラックが着く場所に奈美ちゃんと奈美ちゃんのお母さんが待っていてくれ、奈美ちゃんのお母さんが父親に向かい
「今日はありがとう。みっちゃんをお預かりしますね。」と
そして、私に向かって「みっちゃん、今日のお夕飯はこの市場内にあるラーメン屋さんでラーメンね。ご飯の時間になったら迎えに行くから、それまでは遊んでてね。」と言い、仕事に戻っていきました。
その後、私と奈美ちゃんは父親のトラックが見える駐車場に市場の人からもらったチョークで絵をかいて遊び、出発していく父親を見送りました。
出発の際、初めての一人でのお泊りに、父親は心配そうにしていましたが、私が楽しそうにしていたので、後ろ髪をひかれる思いで出発したそうです。
奈美ちゃんのお母さんが迎えに来てくれ、市場内のラーメン屋さんに行きました。
「残しても良いから、今日は好きなやつを頼んで。」と言ってくれたので、「コーンがたくさん入っているラーメン‼」と二人で頼みましたが、やはり全部食べ切れることは出来ず、残してしまいました。
しかし、店主さんは優しい声で「残してもいい、食べられる分だけ食べてくれれば。次からはおじちゃんに任せときなさい。」と言ってくれたのです。
ラーメンを食べ終わり、暗くなっていたので事務所で遊び、そして奈美ちゃんのお家へ行きました。
奈美ちゃんの家に着くと、奈美ちゃんのお兄ちゃんが出迎えてくれました。奈美ちゃんには5歳上のお兄ちゃんがいたのです。
お兄ちゃんに絵本を読んでもらったり、色々遊び、一緒にお風呂に入り、一緒に眠り、私の初めてのお泊りは過ぎていきました。
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