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心霊

edomondさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

返して
長編 2022/11/28 21:38 2,531view
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小学校の頃、担任の先生に聞いた話です。

その先生が子どものころ、仲良くしていた友だちがいたそうです。
Iちゃんという、おとなしい女の子だったそうです。
当時、「なかよし」と「りぼん」という少女向けマンガ雑誌が流行っていて、女の子たちはみんなこぞって読んでいたそうです。
毎月両方の雑誌を購入するのは大変なので、先生は「なかよし」を、Iちゃんは「りぼん」を毎月買って、貸し合って読んでいました。
数ある作品のなかでも「りぼん」に掲載されていたあるマンガはとても人気があって、のちにアニメになったり、数年後に再度連載が始まったりして、今の私たちの世代でも知っている人が多くいる作品です。
あるとき、その作品の書き下ろしサイドストーリーのようなものが、別冊付録として付いていたことがありました。
Iちゃんはもちろん、雑誌といっしょにその付録も先生に貸してくれたそうです。
それは、主人公の女の子の話ではなく、主人公のライバルの女の子を主役にした話で、そのライバルのキャラクターが好きだった先生は、よろこんで何度も何度も繰り返し大切に読んだそうです。
そうして、次の月の号が発売されて、もういいかげんIちゃんに返さなきゃ…というときなって、先生はその付録がどうしてもほしくなってしまい、返すのが惜しくなってしまったそうなのです。
先生も「りぼん」を自分用に買えばいいんじゃないかと思ったのですが、もうすでに遅く、次の号が発売されてしまっていたので、お店には置いていなかったそうです。

今だったらバックナンバーの購入やオークションを駆使するなどして、過去に発売された雑誌を購入することはむずかしくありませんが、そのころはできませんでした。
先生はそのまま、何事もなかったかのように、次の月の「なかよし」を購入し、読み終わってからIちゃんに貸しました。
Iちゃんのほうでも、今月の「りぼん」を貸してくれましたが、そのときに、「この間の『りぼん』、読んだ? 読み終わったらでいいから返してね」と言ってきたそうです。
先生は思わず、「えっ? もうとっくに返したじゃない」と返したそうです。
Iちゃんはとまどった顔をしたそうです。
それは当然ですよね。
先生は返していないのに“すでに返した”と言われたのですから…。
Iちゃんは「返してもらったのっていつだっけ?」「覚えてないけど…」「家にないから貸したままだと思うよ…」などといろいろと言っていたそうなのですが、先生は“すでに返した”の一点張りで押し通してしまいました。
二人以外のほかの友だちに見せたり貸したりすることもないわけではなかったので、Iちゃんはもやもやしながらも、先生がすでに返したと言うのに納得したそうです。
そうして先生は、Iちゃんから借りっぱなしの「りぼん」と付録を自分のものにしてしまいました。
Iちゃんが家に遊びに来たときにも見つからないように、隠していたそうです。

Iちゃんとはその後も付き合いは続きましたが、翌年、先生は父親が転勤するのに伴い、引っ越すことになりました。
引っ越し先は遠いので、Iちゃんと会うのはむずかしくなります。
先生はお別れの際に、自分が持ったままの雑誌と付録をIちゃんに謝って返そうとも思ったそうなのですが、けっきょくできませんでした。

引っ越して数年たち、先生は中学生になりました。
ある蒸し暑く寝苦しい夜のこと、あまりに暑くて先生は夜中に何度も目が覚めたそうです。
朝方になって、先生はうなされながら夢を見たそうです。
夢の中で、小学生の頃に自分に「りぼん」と付録を盗られたあのIちゃんが出てきました。
Iちゃんは、雨に濡れたかのようにびっしょりになりながら先生の腕をつかみ、しきりに「返して~、返して~、返して!」と言うそうなのです。
その恨みがましい目つきとつかまれた腕の痛さではっと目を覚ますと、先生は汗でぐっしょり濡れていたそうです。
目が冴えてしまったので部屋の電気をつけると、押し入れの中に積んでいたはずの、Iちゃんから盗った「りぼん」と付録が、なぜか先生の布団の近くにあったそうです。
しかも汗で濡れた先生が寝ている間に触れたのか、びっしょりに濡れていたそうです。

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コメント(1)
  • 謹んでご冥福をお祈りします。

    2022/11/29/21:33

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