親切な友人
投稿者:やうくい (37)
その日の晩、家に帰った私は、突然猛烈な吐き気に襲われた。吐いても吐いても吐き気はおさまらず、出し尽くす頃には吐瀉物に血が混ざるようになっていた。
Aに連絡しようと思い、震える手で携帯を持ったが、時間を見て考え直した。いつのまにか深夜1時になっていたのだ。友人といえど
連絡するには非常識な時間だと思った。
そこで、両親に連絡したところ、今から迎えにきてくれるらしい。私は一安心し、うがいをするため洗面所へ向かった。
しばらく水を出して口や顔を洗っていると、排水溝が詰まったらしく、水が溜まってきた。こんな時についてないな、そう思いながらも、放置するわけにはいかない。
嫌々排水口のゴミ受けを取り出した私は、全身の血の気が引いた。長く黒い髪の毛が、びっしりと詰まっている。再び吐き気が込み上げた私は、トイレに駆け込んだ。
さっき見たものが信じられなくて、トイレでえづきながら何度も考えた。
私は短髪だし、残念なことに彼女はいない。女性を家にあげることなど、皆無と言って良いのだ。なのに、なぜあんなものが?
それに、普通に使っていて詰まるような量ではなかった。あれは誰の髪だ?
恐怖と混乱で頭がいっぱいになり、トイレで唸っていると、インターホンが鳴った。
恐る恐るドアの覗き穴から見てみると、幸いなことに両親が迎えに来てくれていた。
それから私のひどい顔色を見た両親は、すぐに私を救急病院へ連れて行き、診断の結果酷い栄養失調だということで点滴を打たれ、一晩入院することになったようだ。
両親の顔を見て気が抜けたせいか、意識が朦朧としていたため、あまり覚えていない。
次の日の朝、両親は仕事とのことで、実家で暮らしている姉が私を迎えに来てくれた。
実は、私の姉はいわゆる霊能者のような仕事をしている。私が異常なまでに霊能者に憧れていた理由も姉にあるのだが、姉との仲は普通に良く、その日も冗談を飛ばしあった。
「ひどい顔色だね!朝から気分悪いよ!」
「病人に言うセリフじゃないだろ。」
「ところで、何を拾い食いしたの?」
「いやぁ、心霊スポットでお菓子をね。」
それを聞いた瞬間、姉の顔色が変わった。
「心霊スポットで何したって?」
急に問い詰められ驚いたが、せっかくなので洗いざらい話しておくことにした。
心霊スポットで足首を掴まれ、転んだこと。
Aに勧められ、供えたお菓子とジュースを飲み食いしたこと。
体調が悪い時、連絡もしないのにAが来たこと。玄関の盛り塩がなくなっていたこと。
Aから御守りをもらったこと。
排水口のゴミ受けに髪の毛が詰まっていたこと。
全部話し終えた時、姉はキッパリと言った。
「Aのことは忘れなさい。」
「はい?」
聞き返したが、姉は何も答えない。
「とりあえず、今からあんたの家に行く。」
すぐに車に乗せられ私のアパートへ向かうことになった。
怖面白かったです!!
その後のAの様子が書いてれば更に良かった。
>>2
友達いないからAの情報すら入らないのがリアル。
最高でした!