髪の毛
投稿者:坊主の屏風 (1)
よくある話ですが、長い黒髪が1本、家に落ちていました。
当時、私、母、祖母はショートヘアで、祖母の介助に来ていたヘルパーさんは明るい茶髪に染めていました。
父は短いですし、祖父は他界しています。
その長い黒髪は、白っぽい椅子の上に落ちていて、かなり目立っていました。
長さにして胸の下、50センチくらいはありました。
その日の掃除当番は一番掃除にうるさい父で、こんなにも目立つ髪の毛を取り逃すとは考えられず。
ましてや、誰の髪の毛でもありません。
違和感はありましたが、父に怒られる前に、私は髪の毛を捨てました。
それから家で怪現象が少しずつ始まりました。
最初はラップ音で、夜中の家鳴りが多くなり、リズムを取るように数分間鳴り続けることもありました。
人の気配がある、誰もいないのに人影を見た、よくある話ですが、実際に起きると鳥肌が立つような寒気がします。
あまりにも変なことが続いたので、私は髪の毛の件を家族に話しました。
すると祖母が泣き出しました。
鉄の女、と祖父に陰口を言わる祖母が泣いているので家族皆、驚きました。
祖母が泣きながら言うには、祖父の浮気相手の髪の毛だと言うのです。
結婚前に祖父の浮気が分かった時、祖父と祖母、祖父母の家族、そして浮気相手を交えて話し合いをしたそうです。
話し合いなどそんなぬるい物ではなく、実際は浮気相手と祖父を脅迫するための集まりでした。
浮気相手は青ざめて、終始ガタガタ震えていました。
鉄の女と言われていた祖母ですから、祖母も家族も相当な剣幕だったんだと思います。
その場の雰囲気と剣幕に押され、受け答えもままならない浮気相手と祖父の二人に、祖母はお茶を掛けたそうです。
その時、浮気相手の震えが止まり、濡れた胸の下まである黒髪の間から睨みつけられたそうです。
祖母はそこで逆上して手が出てしまい、家族や祖父に取り抑えられて、話し合いは解散になったようです。
その後、祖父はほとんど脅されるように祖母と結婚しました。
話し合いの後の浮気相手の行方は誰も分からなくなりました。
もう会うことも無いと思っても、黒髪の間から見えた目は忘れられないほど恐ろしかったそうです。
ですが、祖父と祖母の家に手紙が来たことがあるそうです。
開けると一筆、死ぬまで待ってると書いてありました。
そして長い黒い髪が1本、一緒に入ってました。
祖父は祖母が死んだら一緒になるつもりかと思ったようですが、祖母は違いました。
自分が死んでから仕返しする気だと、感づいたそうです。
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