これは、祖父が死んでまだ間もない時の話。
私はおじいちゃんっこで、夏休みなどの長期休暇の際、
必ずと言っていいほど、田舎の祖父の家へと遊びに行っていた。
釣りや竹とんぼ、川遊びなど、様々なことを教えてもらったけれども、
唯一、裏手にある山の中へだけは入ってはいけないと、口を酸っぱくして言われていた。
なんでも、裏の山の中にはイノシシが住んでいて、
子供を見ると、容赦なく襲い掛かってくるから、だとか。
私も社会人になり、祖父が危篤となった知らせを受け、母親とともに向かったが、
すでに、祖父は病院で息を引き取った後だった。
泣いた、とにかく泣いた。
これでもかというほどに泣いて、葬式が始まるまで、
よく遊んでもらった、川のほとりでたたずんでいた。
そして、ふと思い出したのが、祖父が行ってはいけないと言っていた裏山。
もういなくなったことだし、私も子供じゃなくなったので、
せっかくだし入ってみようと思い、翌日の朝に登ってみた。
すると、中腹ほどにだろうか。
小さな鳥居のようなものがいくつもたっており、その奥には
古びたお社のようなものがあった。
なんだろうと近寄ってみても、すでにそれは壊れた後で、残骸となっている。
それに近寄ってみると、何やらお札のようなものが張られた箱が一つ、置いてあった。
さすがに持ち帰ろうとは思わず、私はそれを見た後で帰ったのだが、
その日の晩、祖父が夢の中に出てきた。
すごく怒っているような顔で、あの箱のことを聞いていた気がする。
私は首を横に振ると、祖父はほっと安心したような顔をして、
「あの箱にゃ触れるなよ」
とだけ言って、あとは何も言わずに歩いて行ってしまった。
後日、ネットでいろいろと箱のことを調べてみると、
「コトリバコ」なる物の記事を見つけた。
まさかと思い、私は後日もう一度山に登って、よくよくその箱を眺めてみると……。
それ以降、私はその山に登っていない。登れない。
あの箱の正体を知ってしまったから、もう登りたいとは思わなかった。
今、あの箱が一体どうなっているのか…知る由もない。
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