真夜中の背中

もう5.6年程前になりますが、私が都内のアパートで一人暮らしをしていた時の話です。初めての一人暮らしだったので、家賃を抑えてオートロックも何もないアパートを契約したのが、そもそもの間違いでした。

友達をよく呼んでおり、平和に楽しく過ごして数年が過ぎたころ。ある日、キーチェーンの鍵の束の中から自宅の玄関の鍵だけなくなっていました。

家に帰ると、鍵がかかっておらず、部屋の中を確認するも特に何か盗られた形跡もなかったのですが、気持ち悪くて近くの交番へ行きました。しかし実害がない以上、見回りを強化する以外なにも出来ないと言われてしまいました。実害が出てからじゃ遅いのに。

その日から1か月程経ったある夜、普段すべての電気を消して寝る事はあまりないのですが、その日は寝落ちして真っ暗な部屋で寝ていました。なにか気配を感じたのか目が覚めて携帯で時間を確認すると夜中の2時過ぎ。ふと部屋の入口を見ると知らない男の背中が見えました。

驚きと恐怖の中、動いたらヤバい気がする…と思いジッとしていましたが、携帯で時間を見てしまったので画面の明るさから私が起きた事に気づいているかもしれない…と考えてみたり、元々霊感があったので、もしかしたら生きてる人間じゃないかもしれない…と考えてみたりしていましたが、恐怖から男の方を見る事は出来ませんでした。

5分程経った頃でしょうか、ドアがバタンと閉まる音がしました。

もしかしたら、ドアの音だけ立てて、まだ部屋の中にいるかもしれないと思い、しばらく動く事が出来ませんでしたが、意を決してドアの方へ向かい施錠しました。さすがに覗き穴を覗いて外を確認する事は出来ませんでした。特に何も盗られてもいませんし、何もされませんでしたが、この日から最近まで部屋を真っ暗にして寝る事が出来ませんでした。