不思議な手
投稿者:ゼラニウム (1)
人が少なくないか?
厨房にあれだけ溢れていた人が居ない。というより減っている。
不思議に思い、隣で皿拭きをしていた子に尋ねると「ああ、なんかね、急にバイトの子がたくさん辞めちゃったらしいの。理由はよくわからないけど」
と教えてくれた。
急に大人数が辞められ、店長は困っていたのだろう。そして周りを見渡すと、鬼のような形相だった社員たちは怒っている、というよりみな死んだような顔をしていた。
単に疲れている、だとかそういった感じではなかった。体から出る雰囲気のようなもの生気が全くなかった。
やはりこの店は何かおかしい、一刻も早く早く辞めなければ。
そう思い入っていた残りのシフトをなるべく減らしてもらい早々に辞めた。
そして次の職場で割と楽しく過ごしていたとある日。大体私が辞めてからひと月ぐらい経った頃だろうか。
風の噂で「あの店は潰れた」と聞いた。私は驚きを隠せなかった。開店してたった3カ月程度で閉店するなんて、と。
実際に後日見に行ったが本当に閉店していた。理由は語られていなかった。
その後そこに新たに店が立つも、続かずすぐに閉店していた。
私は思った。あの店には、もしくはあの土地には「何かが居る」のだろう、と。
新しい職場でその話をすると霊感のある人からこう告げられた。
「あのね、よくないものがたくさん居る所に居続けると性格が変わっちゃうの。怒りっぽくなったり、泣きやすくなったり。」
それを聞いて納得した。どんどん怒りが増す人たち。あれはそう言ったものに影響されてしまっていたからなのだろうか。
だとしたら私はその前に辞めることが出来て本当に良かったと思った。
あの手は止めてくれたのだろうか、それとも何かのアピールだったのか。
今となっては分からないが、あそこで働いていた人たちが元の性格に戻ることが出来ていればいいなとは思う。
今でもそこを通ると不思議な気持ちになるが、あまり見ないようにしている。なんとなく怖いような気がするからだ。
今では別の店が立っているがいつまで続くのだろ、とも思いながら。
霊、土地云々よりブラック企業だよ。