観覧車から覗く人影
投稿者:ぴ (414)
一人だったけど誰かが乗っているのが分かりました。
それをじっと見ていたら、その相手がこっちに気づいたようで手を振っているように見えたのです。
私は自然と手を振る人影に、手を振り返しました。
そうこうしていたら、後ろから母に呼びかけられました。
どうやら雨が小雨になってきたようで、お店から出るようでした。
お店から出る前に、最後にあのピエロにお別れを言って外に出ました。
その後、雨は降り続きましたが小雨くらいだったので、しばらくはみんなで乗り物を楽しみます。
ジェットコースターにもなんとか乗れたし、子どもが楽しめるアクテビティもたくさんありました。
すごく楽しくて、時間はあっという間に過ぎました。
相変わらず雨は鬱陶しかったけど、それでもなんとか遊園地で遊べたので嬉しかったです。
父がそろそろ帰ろうかと言い出したときに、私と妹はぐずりました。
だってもっと遊びたかったのです。
だから私はなんとか少しでも遊園地にいる時間を引き延ばそうとして、「あれに乗りたい」と言いました。
それはずっと土砂降りの中でも変わらず動いていたあの観覧車でした。
私は家族みんなで観覧車に乗って、下にいる人に手を振りたいと思っていました。
私も手を振ってもらったので、自分も同じことをしたいと思ったのです。
だけど、観覧車まで行くと故障中だといわれてしまいました。
あんな雨でも動いていたのにと私は観覧車を見上げました。
そしたら誰かが乗っている人影が見えたので、「人がいる~」って、父に訴えました。
スタッフの人はヘラヘラ笑いながら、「誰もいないよ~」と言いました。
でも私が見上げた先に、明らかに人が乗っているのです。
人影が見えているので、私はむきになって、「あそこにいる」と観覧車を指さしました。
指さすとその人は手を振ってくれたのです。
私もニコニコして、手を振り返しました。
父と母がどこにいるのかと私に聞いてきて、私はあそこと居場所を教えたけど、どうやら父も母も見えないみたいです。
どうして見えないのかと不思議でならなかったです。
けれど私はふと観覧車が動いていないことに気づくのです。
回らない観覧車に人が乗っています。
なぜ動かないのか分からなくて、スタッフさんに「動かしてあげて」とお願いしました。
そうじゃないとあの人が帰ってこれないと私は言いました。
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