外界と切り離された祠

私が子供の頃の話です。

当時住んでいた家の近くには小さな森があり、中には小さな祠がありました。

鬱蒼とした雰囲気で近所の人も立ち寄りませんが、好奇心旺盛だった私は祠を目指して中に入って行きました。

中に入ると静謐な空気が辺りを満たしており、意外と怖さはありません。

普段は感じない雰囲気を存分に堪能して、帰路に就きました。

家に着くと何だか物々しい様子です。私の顔を見た母は泣き出し思い切り抱きしめて来るのです。

他の家族も酷く安堵した顔で「今までどこに行っていたんだ」と呆れ混じりに尋ねます。

祠に行っていたと答えると祖母が「やっぱり神隠しだ」と言います。

整理して聞いてみると私は2日間行方不明になっていたそうです。

そんなはずはありません。私はあの祠に30分位しか滞在しなかったのです。

家族皆で私をからかっているのかとテレビをつけて日付を確認すると、本当にあれから2日が経過していました。

結局私は2日間行方不明になったショックでその様な記憶に改ざんしてしまったと片付けられました。

ですが私は確かにあの祠には短時間しか滞在しなかったのです。

きっと、あの祠で感じた静謐な空気は、あそこだけが外界と切り離された特別な場所と言う事を物語っていたのだと思います。

あれ以降祠へは行っていません。