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あの日の思い出さんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

オグチ岩
短編 2022/10/14 11:59 2,728view
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これは、僕がまだ小学生だった頃の話です。 僕の住んでいた地域では昔から、ある大きな岩の話が子供たちにも伝わっていました。

その岩は『オグチ岩』と呼ばれている岩だったんですが、夜になると人を食う岩として有名だったんです。

なんでも、昔はあの岩は生きた鬼の頭で周辺の人間を食っていたところを首を切られ、頭だけを岩の中に封印されたんだとか。 僕が小さいころにも親からあの岩のことを教わったんですが、夜な夜な岩の中から獲物をよこせ、食わせろなんて聞こえてくるなんて話ばかりで、そのせいか僕もあまり近寄ったことはありません。

オグチ岩自体、もう結構ぼろぼろの岩だったんで崩れたりしてケガする子供が出ないように遠ざけていた面もあるんでしょうがね。 とはいえ、大半の人間はそういったものに好き好んで近づかないものの、怖いもの知らずというのはいつの時代もいるものです。

夏休みに入る前の最後の授業の日、クラスメイトの一人のいわゆる悪ガキと呼ばれるタイプの男の子が周辺の男子と何やら話をしていました。 聞き耳を立ててみると、どうやらそれは今度の夏休みに肝試しをしないかという話でした。 夏祭り中にある祭りに乗じて、夜に抜け出してオグチ岩に触ってこないかと。

当然、周囲の男子の何名かは反対します。しかしながら、怖いもの知らずは時に伝染し、冷静な思考力を奪っていくものです。 僕は彼らとは仲がいいわけでもなかったので会話には参加していなかったものの、結局三名の男子がオグチ岩に肝試しに向かうことになったということだけは、僕の耳にも入りました。

時間が流れて夏休みの最中。 僕は祭りなどの人混みがあまり好きな方ではなく、祭りの日は部屋で宿題のドリルをのんびりと片付けていました。 すると、夜遅くにもかかわらずチャイムが鳴る音がします。幸いリビングにはほかの家族もいるし、僕には関係ない。そう思っていたのも束の間、外から聞こえてきた切羽詰まったような声に思わず僕も部屋から出て様子を伺いました。

見ると、やってきたのはクラスの悪ガキの母親のようでした。 どうやら彼女が言うには、子供たちが祭りに行くというので自身も後で様子を見に行ってみようと思ったが、何人かの屋台の店主に話を聞いても誰も子供たちは来ていないと言われてしまったそうな。 そして、ここにうちの子供が来ていないかと血相を変えてやってきたとのこと。

とはいえ、うちにも彼らはいない。 しかしそこで、僕は夏休み前に聞いたことを悪ガキの母や家族に告げました。 すると、大人たちはみな血相を変えてオグチ岩の方へ様子を見に行くと言い、僕たち子供には絶対に家から出るなと念を押しました。

その時点で、これはただ事ではないとわかった僕はそのまま部屋へと戻りました。 そして次の日、昨日の夜に戻ってきた家族から話を聞くと、悪ガキたちはみな無事なようで僕は安心しました。 しかし、悪ガキたちの衣服を見るとどうやら何かにかまれそうにでもなったのか、上着やシャツが破れ、血を流している子も中にはいたと。

それを聞いた時、本当にオグチ岩は人を食うのかと一瞬思いましたが、それならばなぜ彼らは食われていなかったのか。 僕にはわからないものの、悪ガキたちが言うには、一心不乱に岩から逃げていったら後ろから知らない大人の叫び声がしたとか。

後日、昼間の日が高い時間に僕はオグチ岩を見に行きましたが、規制線のようなものが張られ近づくことはできませんでした。 どうやら近所の人が言うには、祭りの日に近所のホテルに泊まっていた観光客の一人が行方不明になっていると。 真偽のほどは、今となってはわかりません。

ただ、僕が最後にオグチ岩を見た時、あの岩の口のように見える部分が、いつもよりも濃い茶色に染まっていたような、そんな気がしたのです。

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