カエルの化身
投稿者:ぴ (414)
でも私は彼を助けた記憶がありません。
そのまま3人は小さな明かりの中ずっと話していました。
そしてその影が変なんです。
人の影ではなく、もっとずんぐりむっくりした影が3つありました。
私は怖くなってきて、音を立てずにそうっと寝ていた部屋に戻って布団に入ると、気づいたら朝を迎えていました。
翌日昼過ぎまでみんなで他愛もない話をし、車で彼と帰りました。
その帰りに私は彼の両親に手土産をもらったのです。
それは風呂敷に入ったタッパーで、私はお漬物か何かだと思って喜んで受け取りました。
田舎のおばあちゃんを思い出し、とても心温かい気持ちになりました。
だけども帰り道、車で送ってもらう途中、彼のほうはちょっと落ち込んでいるように見えます。
私は彼を元気づけるために何か話題を見つけようとして、思いついたまま昨夜の話をしてしまったのです。
私が「そういえば、私ってあなたを助けたことあった?」と聞きました。
本当についうっかり出てしまった余計な一言で、昨日の夜盗み聞きしてしまったことがバレてしまったようでした。
彼はとても驚いてこっちを見て、しばらく車内がシンと静かになりました。
私は家に辿り着くまでの道中がものすごく長く感じます。
自分から盗み聞きをバラしてしまった罪悪感で、すごく後悔しました。
私は話を変えようと思って、思わずご両親からもらった手土産のことを思い出したのです。
そして一緒にそれをつまもうとそのタッパーを開けてしまいました。
開けた瞬間にぞわっとしました。
だってタッパーの中にはお漬物なんかじゃなく、びっしり詰まったうじゃうじゃした虫が入っていたからです。
私は腕にびっしり鳥肌を立てて、大きな悲鳴を上げました。
その拍子にタッパーを車内でひっくり返しました。
虫は生きていたみたいで、タッパーから出てうごめき始めたのです。
私はその様子を見て、益々鳥肌が止まらなくなりました。
私が隣でギャーギャー悲鳴をあげているのに、彼はまったく慌てません。
ただ少し寂しそうに見えました。
途中トイレ休憩できるところで、虫を車から外に追い出して、ほっとしたところを彼はいつも通り私を家まで送ってくれました。
最後に「ごめんね」と言われたこと、すごく印象深いです。
なんだか寂しそうにそう言われて、彼は私を車から降ろして去っていきました。
その日から彼とは連絡が取りづらくなり、私もあの日の気まずさからこちらから会いたいと言い出せず、それから次第に連絡を取らなくなりました。
切ないです。気を落とさず新しい彼氏を見つけてください。
おとぎ話みたいで引き込まれました。
結婚してたらどうなっていたのか・・・
彼は、きっと下戸だね。商社マンも変わったな。
寂しそうにごめんはきつい、感動