消えた釣り人

私は釣りが趣味なのですが、基本的に週末になると毎回のように釣りに出かけています。

金曜日の夜に出発することが多く、仕事が終わって土曜日に釣りを楽しむことにしているんです。

その日も金曜日の深夜に自宅を出発して、2時間程度かけてある港に到着したのですが、一人だけ先客が存在しました。

いつもは無人になっていることが多いので、他に釣り人が存在して最初はびっくりしましたが、すぐに話しかけたんです。

釣れていますかと丁寧に話しかけたところ60代か70代くらいの男性が振り返って、まだ釣れてませんと答えてくれたので、隣でやっていいですかと尋ねたら、どうぞどうぞと言ってくれたので、隣に釣り座を構えることにしました。

話をした雰囲気では紳士的な男性であり、仲良く釣りを楽しむことができるなとホッとすることができたんです。

少し寒い季節だったので缶コーヒーを自販機がある場所まで買いに行って、おじさんの分も買って釣り座まで戻ったのですが、戻ったときには先ほどまで居たはずの、おじさんが釣具と一緒に消えていました。

自分の釣具は普通に全部残っていましたが、おじさんと釣具だけが全部消えており、最初は海に落ちたのかとヘッドライトで周辺を照らしましたが、何も見つからなかったですし、声なども聞こえなかったです。

ふと気づいたことですが、車を駐車できるスペースには自分の車しか存在しなかったですし、自転車などもなかった。

周囲には民家はありませんし、おじさんはどうやって来たのか。

いろいろと考えていると朝になり、周辺が明るくなってきたのですが、おじさんは見つからなかったです。

朝になると地元の釣り客が来て、その人物に不思議な出来事を伝えると、あんたも出会ったのかいと言われて、ゾクっとしてしまいました。