「パパ、浮気は本当なの?」
「……本当だ」
「相手に子どもができたことは知ってたの?」
「知ってた。産みたいと言われたけど、俺には千尋達がいるからやめてほしいと言った」
「自分には娘が二人もいるくせに産むなって言ったの?」
「……」
「家族がいるくせに浮気をしておきながら? そんなの呪われて当然じゃない!」
「ちゃんと相手には謝る。だから離婚だけは……」
「ふざけないで! 絶対に離婚するから! 子ども達にも会わせない!」
「それだけはやめてくれ!」
「直哉!!」
義父が一喝すると夫は黙ってしまった。
「自業自得だ。お前との縁が続けば子ども達にも呪いが渡る。そんなことは俺が絶対にさせない。ケジメをつけろと言っただろ」
「……わかった」
私の方を見ることなく夫はそう言った。
「千尋さん、今日はうちに泊まっていってくれ。明日以降は考えよう。あの家はしかるべき対処をこっちでしておくから」
「わかりました」
たった数時間で目まぐるしく状況が変わってしまった。
明日からどうしようとか、子ども達にはなんて言おうかと次から次へと考えるべきことがあふれた。
翌日、子ども達は学校を休ませ、義母に世話を任せてから私は荷物を取りに義父と家に戻った。
書斎にさえ入らなければ今のところは問題ないらしい。
車に積めるだけ荷物を積み、三往復して必要な物をすべて持ち出した。
最後の荷物をトランクに載せたときだった。
昨日見かけたあの女性が同じ場所に立っていた。
夫の浮気相手に違いないと思い、私は近づいて行った。
彼女はもう笑っていなかった。
その表情を見て、私は怒りよりも申し訳なさを感じた。
浮気をした夫が完全に悪いが、私達さえいなければ彼女は子どもを失わずに済んだはず。
そう思うと彼女を責める気になれなかった。
「私達、離婚することになりました」
「……」
「夫はあなたに本当にひどいことをしました。だからあなたのやったことを咎めるつもりはありません。
私にも子どもがいますから、あなたがどれだけ辛い想いをしたのか少しはわかると思います。本当にごめんなさい」
頭を下げる瞬間に彼女の傷だらけの手首が目に入った。
「こんなこと私が言うのはおかしいですけど、あなたはまだ若いですし、これからいくらでもやり直せます。
だからあんなクズ男を呪うなんてやめて、自分の幸せのために生きてください」
一瞬だけ目が合ったが、すぐに俯いてしまった。
「それじゃあ、さようなら」
彼女に背を向けるととても小さな声で「さようなら」と聞こえた。























恨んだ相手本人ではなく場所に憑いてるっていうのが、家族を巻き込む形の呪いで怖かった
しかも呪いはまだ続いてそうで、、、
浮気した旦那が全て悪いわな…