水で流したとはいえとてもまともな状態ではない夫は風呂へ直行させられた。
それから風呂から上がった夫と私、義父と義兄で居間のテーブルで向かい合った。
「まず直哉に聞きたいことがある。お前、浮気をしたな?」
義父の言葉に私は目を丸くしたが、夫は気まずそうに俯いた。
この反応は黒だ。
「相手に子どもができただろう。それを堕ろさせたのか流れたのかは知らんが」
「……はい」
「その水子が憑いてたんだよ。正確には憑かせたんだろうがな」
「どういうことでしょうか?」
義父や義兄は訳知り顔だったが、私はさっぱりだったので口を挟んだ。
「この辺りでは大昔に人を呪うのを仕事にしてる人間がいたんだよ。
まあ大抵はデマカセだったんだが、中には本物もいたらしくてなぁ。
その一つに不貞を働く男にかける呪いがあったのさ」
「はぁ」
「身勝手を働いた男に罰をくれる意味もあったんだろうな。その男の水子を使って呪いをかけるんだ。
泣き声が聞こえるところから始まって、姿が見えるようになる。それから赤ん坊の世話をしなければいけないと思い込むようになるんだ。
そうなってしまうと周りのことはおろか自分自身の世話すらしなくなる。そうして衰弱死してしまうんだ」
まさに夫の状況そのものだ。私達が実家に帰ってから飲まず食わずで見えない赤ん坊の世話をしていたのだ。
「酒と牛乳をかけたのは一時的な対策だ。水子の呪いは人じゃなくて場所にかける。そこから引き離しさえすればなんとかなるんだよ」
「じゃあ赤ちゃんの泣き声が聞こえていたのはあそこに呪いがかかっていたからですか?」
「そうだな。千尋さんと子どもには声だけが聞こえて害はなかったのは幸いだった」
そう言ってから義父は夫に向かって言った。
「わかってるな? もうあの家は住めない。お前はケジメをつけなくちゃならん」
夫は黙ったままだった。
「千尋さん、本当に申し訳ないが離縁してやってくれ。じゃないといずれあんたや子どもにも害が出てくる。
必要なものは全部こっちで用意するからこの通りだ」
義父は深々と頭を下げた。
「やめてくださいお義父さん! お義父さんが頭を下げる必要はありません!」
「いいや。末っ子だと甘やかして育てた結果がこれだ。俺にも責任がある」
「そんな……」
突然の展開に動転した。何も言わない夫に腹が立ってきた。























恨んだ相手本人ではなく場所に憑いてるっていうのが、家族を巻き込む形の呪いで怖かった
しかも呪いはまだ続いてそうで、、、
浮気した旦那が全て悪いわな…