「なにするんだ! やめろ!」
「直哉! しっかりするんだ!」
「離せ! 赤ちゃんが落ちたらどうするんだ!」
どうやら夫を書斎から引っ張り出そうとしているらしい。
義兄二人がかりで押し出そうとしているが、夫は頑なに拒んでいる。
「父さんダメだよ!」
「そのまま押さえてろ!」
義父は持ってきた荷物から酒瓶を取り出すと、それを夫の頭に振り掛けた。
「なんだ! やめろ!」
「千尋さんすまないね! 後で片づけるから!」
そういうと今度は牛乳パックを取り出し、それを頭からかけ始めた。
白い液体が頭を伝い、ビチャビチャと音を立てて畳に落ちた。
大の大人二人に抑え込まれながら夫が牛乳を頭からかけられている光景に私は立ち尽くすしかできなかった。
「それ今だ! 外まで連れてけ!」
夫の脇を抱えて義兄二人が走り出す。
引きずられた夫の軌道を描くように牛乳が滴り落ちた。
私も急いで後を追った。
夫は駐車場でへたり込んでいた。
「千尋さん水! 水かけて!」
「えぇ! 今ですか?」
「そうだよ! 早く!」
真冬に外で水をかけるだなんて、と思いながらホースを引っ張り、義父に手渡してから蛇口を捻った。
頭から水を浴びせられ、全身がずぶぬれになったところで夫が顔を上げた。
私はタオルを取りに部屋へ入る。先ほどよりも嫌な空気が薄くなったような気がした。
「直哉、わかるか?」
夫はぼんやりとした顔で義父達を見上げていた。
タオルをかけてあげても反応がない。
「パパ、大丈夫?」
「……千尋? あれ、なにしてるんだ俺」
「大丈夫かお前」
「えっ兄さん? なんで? 父さんも?」
「うん、とりあえず大丈夫そうだな」
ほっとした顔をする私達を夫は茫然と見上げていた。
それから夫の実家へ一緒に行った。

























恨んだ相手本人ではなく場所に憑いてるっていうのが、家族を巻き込む形の呪いで怖かった
しかも呪いはまだ続いてそうで、、、
浮気した旦那が全て悪いわな…