海で溺れたら謎の生物に助けられた話
投稿者:isola (3)
あれは小4の頃だったと思います。
夏休みに入った私は、同じマンションに住む同学年だったHちゃん家族と合同で海水浴に行きました。
私の両親とH家族は、母親同士が普段から世間話をする仲で、父親同士も親交があり、気の置けない間柄でした。
夏が始まったばかりの海水浴場は、収容率が8割といった具合に活気溢れており、色とりどりのビーチパラソルが花開いてどこもかしこも楽し気な歓声で賑わっています。
父親同士は人混みの中で泳ぐよりは出店でビールを買ってはパラソルの下で談笑に花を咲かせており、母親達は日焼け止めを塗るのに勤しんでいるので、私とHちゃんは「海で泳いでくる」と一言添えて砂浜を駆け出しました。
「浅瀬から先は危ないから気を付けなよー」
「「はーい」」
母に見送られながら元気に返事をすると、さっそく私とHちゃんは海へ足を付けます。
その冷たさは猛暑の倦怠感を一気に吹き飛ばすほどで、清涼感に包まれた私は「ふーっ」と親父臭い息を吐き、そのまま両足の膝下まで入り込みました。
「きもちいいね」
「つめたーい」
私が問いかければ、少し後ろで体を震わせながらも海の冷たさを満喫しているHちゃんがキャッキャとはしゃいでいました。
私達は子供用の浮き輪を持参していたので、海面にバシャッと音を立てて浮かべた後、それをビート板に見立てて泳ぎだします。
小さい子を連れた家族は砂浜や浅瀬で水浴びをし、中高生くらいは肩まで浸かる程度の場所でビーチボールを飛ばしたり潜水して遊んだりしていますが、それより先の水平線の先に境界線を示すブイが浮かんでおり、大人達はその手前でボートに乗ったり人がゆったり乗れるベッドタイプの浮き輪に乗って楽しんでいました。
海に入って暫くすると、私は小学生なので肩が浸かる程度の浅瀬でHちゃんと水を掛け合いっこして遊んでいたのですが、不意にHちゃんが「もうちょっと奥に行ってみない?」と言い出したので、少し悩みながらも「うん」と了承してしまったのです。
浮き輪を装備して泳いで進むHちゃんに続いて、私も浮き輪に体を通して追いかけていきます。
中高生達が本気で泳いだり潜ったりして遊ぶ、所謂中層エリアに差し掛かるも、Hちゃんはそのエリアを突き抜けて大人達が遊ぶ様な深淵を目指します。
私は思わず「そっちは深くて危ないよ」と声を上げますが、Hちゃんは「浮き輪あるから大丈夫」と言ってぐんぐん進むので、私はバタ足の速度を上げて懸命に後を追いました。
いざ深淵に到着すると、流石に海面の色は青いというよりは青黒くなっており、何処までも深く続く海中に浮かんでいる事実が急に怖くなって息苦しく思えました。
ただ、左右を見ればバナナボートに乗っている人や、もっと遠くで泳いでいる人も疎らながら確認できるので、不安感はそれほどでもありませんでした。
私達は深淵に来ても特にやる事も無く、小さな浮き輪と身一つ出来る事もないのでクラゲの様にゆったりと漂ったり、時折風に流されそうになれば反発してバタ足で陸地側に泳いだりと、贅沢な時間の使い方をしていましたが、Hちゃんが「ブイまで行ってみる?」と提案した時は流石に全力で「それはやめとこう!」と、今にも泳ぎだしそうなHちゃんの浮き輪の紐を掴んで引き止めるのに大変でした。
ただクラゲの様に漂う事に飽きたのか、Hちゃんが今度は「どっちが長く潜っていられるか勝負しよ」と言ってきたので、すかさずそれも危ないと窘める
ものの、浮き輪の紐を握って行うから問題ないと、逆に説得された私はなあなあで妥協してしまったのです。
今思えばこの判断が不味かったのでしょう。
Hちゃんの「せーのっ」の合図で私達は同時に海中に沈みます。
正直な所、潜水しても肺に空気が入っている以上自然と浮いてしまうので、伏せた態勢で背中が海面に出てしまいますが、頭上に浮き輪の軽い感触を伴いながらも、私は鼻を摘まんで海の底を見つめていました。
ゴーグル越しに見える世界は、太陽光の乱反射を帯びているせいか数メートル先は淡い漆黒を見る事が出来ます。
しかし、それより下はまさしく深淵が続くのみで、自分の体が浮いているのも忘れて落下する恐怖を覚え、身の竦む思いでした。
そんな折、私は見える筈もない海底を見続けていると不安に駆られたので、Hちゃんの方へ顔を向けると、隣にHちゃんの姿がない事に気付きます。
思わず一旦海面から顔を出して息継ぎを忘れて「Hちゃん…?」と口を開くも、海面にはHちゃんの浮き輪が一人寂しく漂っているだけでした。
怖いけど面白かった
怖いけどちょっと夢のあるお話ですね
すごい良いお話でした。海に囲まれた島に住んでますが、特に変なものには会ったことないので、会ってみたいなと思いました。(笑)
バニップ(bunyps)じゃないですか。?
怖いよぉ〜