巻き戻った時間

私は不思議な現象をこの目で見たことがあります。

その日私は電車に乗って、制服姿で学校に向かおうと思っていました。

近くには同じく学生やサラリーマン風のスーツの人が多く、一緒に並んで電車を待っていました。

その中で私は一人だけ、なんだか目についた人がいたのです。

平日なのに、まるでこれからどこか遊びに行くみたいに、ラフな格好のお兄さんでした。

おしゃれなデザインの入ったグレーのパーカーと動きやすそうなパンツ姿で、リュックを背負っていました。

どこに行くんだろうと、なんとなくその人を見ていたらその人はとある学生をじっと見ていました。

そしたらその学生が電車が来る直前に、急によろめいたのです。

止める間もなく、あっという間に吸い込まれるようホームから落ちていく学生の姿がスローモーションのように流れました。

その場は大惨事。

私はうっと吐きそうになるのを我慢して、今あったことを思い出して眩暈がしました。

そして次の瞬間急に目の前がぐるぐる回ったと思ったら、私はまたパーカーのお兄さんを見ていたのです。

私は全然理解していませんでした。

そしたら向こうから電車がやってきたのです。

私はゆっくりとお兄さんが見ている学生に目を止めました。

すると学生はよろめきます。

「あ…」ともう一度同じ光景を見ることになると恐怖を感じたら、あのパーカーのお兄さんが動きました。

あの学生がよろめいてよたよたしてホームに落ちる前に、そのお兄さんは学生の服を掴んだのです。

どうやら周りの人たちはその危なさにあまり気づいていないようで、電車が止まると普通に電車に乗りんで行きました。

だけど間違いなく、本当に危機一髪だったと思います。

パーカーのお兄さんは具合の悪そうな学生を車掌さんのところに連れていき、預けたようでした。

私はそれを見て一気に体から力が抜けてしゃがみ込みました。

パーカーのお兄さんはその後、何事もなかったかのように一本遅れの電車に乗っていきました。

私が奇跡みたいな出来事を目撃してしまい、巻き戻った時間を体験できたのはただの偶然だったのでしょう。

きっとあの人が何かしたんだろうと私は未だに信じています。