不思議なノラ猫「ぶち」
投稿者:ぴ (414)
それから4~5か月くらい経った頃でしょうか。
可笑しな噂を耳にすることになりました。それは学校でぶちを見たという目撃証言なのです。
運動場で部活をしていた学生が「ぶちを見た」と言いました。
一人だったら見間違いとか勘違いで済むかもしれません。
しかし、目撃した人はその学生一人ではなく、複数人いるらしかったです。
ぶちの特徴である大きな黒縁が同じ場所にあり、さらに「ぶち?」と呼んだらこちらを振り向いたというのです。
私はそんな話信じられないと思いました。だって私はあの事故を一番近くで見た目撃者なのです。あれがぶちじゃないわけがないと思いました。
しばらくその話で、学校中がざわざわしていました。死んだぶちが生き返ったという噂話で、持ち切りになりました。
そして数人が私に会いに来て、「事故したのは本当にぶちだったの?」と問い詰められました。私は頷くしかなかったです。
だってあれは紛れもなく、ぶちでした。確かにちらっと見ただけでは分からないかもしれないです。
でもあの日私は校門の外でうろうろしているぶちを目で追いかけていました。
そして同じところに黒縁があることをこの目でしっかり確認して、名前に反応して振り返るところまで見ているのです。紛れもなくぶちだと確信していました。
けれど私はどうも気になってしまって、学校でぶちが出没したと聞くと、そのあたりを探すようになっていました。
けれどそこでは一度もぶちに出会えなかったです。
その日もとぼとぼと一人で歩いて帰っていました。
そしたら目の前をノラ猫が横切ったのです。
私ははっとしました。だってそのノラ猫には、見慣れた黒縁があったからです。
「ぶち?」と私は呼んで、走ってそのノラ猫を追いかけました。
公園を横切って、ノラ猫は脇にある草むらを走っていきました。
私はもう夢中になってその猫を追いかけていきました。
ただ、そうやってぶちに似た黒縁のあるノラ猫に夢中になりすぎたのです。
気づいたらなぜか私はノラ猫を追いかけて、道路に飛び出していました。
「あ…」て思いました。横から車が走ってきて、私はあまりの驚きで固まってしまいました。
思いっきりぎゅっと目を瞑って、自分の死を覚悟します。
しかし、急ブレーキの音が響いただけで、私は無事でした。
放心状態でいる私に車の運転手が窓から顔を出して、「バカヤロー」と思いっきり怒られました。
私は慌てて数歩後ろに下がり、よろよろと道路から歩道へと戻ることができたのです。
しばらくそこにぼーっと立っていて、自分が今死にかけたことに恐怖を覚えました。
そしたら道路の向こうで、猫が「ニャー」って鳴いたのです。
見たらそこにはあのぶちの生き写しのような黒縁の入ったノラ猫がこっちを見ていました。
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