いる、物件
投稿者:グロリア (5)
転職回数が年齢に比例して多くなってくるのは運が悪いのか、はたまた自分の就活能力が低かったのかは定かではないが、私が就活した際は正直言って地獄のような圧迫面接が噂になっていた。
そしてその中で周りの就活生をしり目に、見事ゴールインしたと勘違いした挙句、何も知らない学生たちは社会の、どちらかと言えば下の方のブラック企業に就職する人たちもいる。
そんな時、私も見事に就活を終え、そしてブラック企業の一員としてやりがいのあるお仕事に就かせてもらった。むろん、どこだとは言えないが不動産業だ。
人間に欠かせない衣食住の業界はおいそれと人間が大量に首になったりせず、そこそこの成績さえ出していれば問題はない。
仕事の能力の有無はともかくとして、お客様が存在する、ありていに言ってしまえば他の人と話をすればするほど、噂話というものが変化していくのを感じやすい。
ブラック企業であったものの、私はその間接的な部門に所属となり、一時期在籍していた実店舗で先輩から怖い話を聞いた。
「怖い話が好きなんですよ」
「あぁ、ここはそういうの意外と多いよ」
曰く、住居は人の死ぬ場所であるとのこと。誰も気にしていないが、ある日死んでいた、なんて話はよく聞く。看取る人がいなければなおのことだ。そしてその次の人がそこに入り、ある日、お客さんがやってきて内容を聞いた。
「出るんです」
その一言は非常に簡潔だった。平凡な一軒家に住んでいるらしいが、住居を変更したいとの申し出だった。お金の話は置いておくとして、どこに出るのかと聞いたら、ベランダと、その庭先に出るそうだ。浮いているそうで、ベランダから見ると頭があたりが見切れて、庭先からは足が見えるらしい。
違和感があるもんで、どんなふうに幽霊が見えるのかさっぱり見当がつかなかった。もちろん、それ以上首を突っ込んで聞くわけにもいかないので話はそれっきり、余計な詮索をするなと言うのはわかっていたのでみたら、合点がいった。
その庭には、立派な木があったのだ、だからそう、見え方に関してはまさしくその通りだった。そして、目が合うよりも怖い話だ。
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