消えた『たかしくん』
投稿者:煙巻 (8)
そう言えば、母さんはたかし君の事を覚えていないのかな?
俺は僅かな好奇心から母親にその旨を訊ねてみるが、やはり「そんな子いたっけ」と首を傾げられた。
やはり全ては俺の勘違いか思い違いなのだろうか。
その事を決定づけるかの様に、当時の担任と連絡を取ったFから電話が来たので出てみれば、「やっぱりたかしって奴は当時の名簿に居なかったってさ」とわざわざ調べて連絡してくれた。
俺は「そっか、ごめん」と返すが、Fは「きっと中学とかの友達とごっちゃになってんだよ、気にすんな」と気遣ってくれた。
翌日、AとBから連絡が来て、何事かと思えば、あの神社の立札の所に行ってみようと何人かの男子と話が纏まったそうで、俺も強制参加を促された。
そうして集まった顔ぶれが当時の面子そのもので、たかし君を除けば大人になった面子が集結したのだ。
俺の記憶違いでなければの話だが。
大人になると長くて辛かった石段も割とすんなり踊り場に登りつく事が出来、その脇道の茂みを掻き分けた先にある立入禁止の立札を見つけて全員がゴクリと生唾を呑み込む。
真昼間ではあるが、ここまでは当時の記憶そのものだ。
しかし、昼間だからこそこの先に何があるのかが分かる。
他の面子は何故か当時誰が立札の先を確かめに行ったのか思い出せないという話から恐らくその記憶の回帰が目的で来たのだろう。
俺はたかし君が何もなかったと語った事が実は気掛かりだったので来たのだが、こんな事をしてもきっと何も分からないままだと心の何処かで諦めていた。
立札を抜けると、何も舗装されていない山道が続き、太陽光を完全に遮った木々の中を進む事になった。
大人の足でも10分を超える曲がりくねった細道だった事から、俺達は「こんな道があったんだ」とか「何か楽しくなってきた」なんて語らい、冒険心を擽ったのか楽しそうに会話を弾ませていた。
暫く進んだ先で僅か一畳ほどの空間に突き出たが、相変わらず天蓋を木に覆われた薄暗い空間だった。
しかし、そのど真ん中には注連縄と思しき飾りが侵入禁止を意味する囲いとして張られており、その中央に首が地面に落ちた薄汚い地蔵が置かれていた。
流石に気味が悪かったので、俺達はさっきまでのテンションがガタ落ちとなり、暫し黙々とその光景を眺める事しかできなかった。
一先ず、不吉なものを感じ取ったせいか、その場に居た全員がすぐに引き返す事を了承して戻る事になり、踊り場に出るなり各々が緊張から解放された反動で「マジこわー」「ここって曰く付きだったっけ」と盛り上がる。
そんな中でも、俺は当時の事を思い返していて、たかし君は一人であの道を進んであの地蔵を見つけたのだろうかと思いを巡らせていた。
当然、立札の先を確認したからと言って全員の記憶が戻る事もなく、結局たかし君については誰も触れる事無く解散となった。
俺は帰宅してからというもの、部屋のクローゼットの中の荷物をひっくり返して、小学校の時の文集やら思い出の品に全て目を通す。
写生大会も運動会も工場見学も、卒業式のアルバムでさえ、たかし君の姿はなかった。
やっぱり俺の記憶がおかしいのか。
そう思った俺はグーグルで記憶障害を検索すると健忘症に行きついたが、俺は「たかし君」を含めてこれまでの記憶と現実の出来事に差異はない所か殆どそのままの体験を覚えている。
半信半疑の中、念の為に健忘症や認知症の線を疑い病院を回ってみたが、至って健康であると診断された。
では、どうして皆の記憶と俺の記憶が違うのか。
その後も偶にだが級友に遭う事があれば「たかし君」について訊ねる俺が居て、級友も「またその話か」と呆れながら同じ返答をすると言うのが一種の通過儀礼となり、中には俺がおかしくなったと言う者も現れた。
AやB、C子にも「もうたかしの話はやめろよ」と警告されたが、俺はどうにも納得できない事から反発心で折を見ては「たかし君」について訊ねた。
そして現在、俺は普通に結婚して子供も誕生し、父親になった訳だが、今でもたかし君については何も解決してない。
苗字知らんのか?
↑そういう話じゃないと思うのだが・・・
前に怪談のイベントか何かで、「自分しか覚えてない小学校時代の同級生がいる体験談」が意外と多いと話題になってた
イマジナリーフレンドとはちょっと違う感じもあって面白い
どういうこと?
面白かったです
この話がわからない人がいるのがわからない
なんだよc子と結婚したかと思ったのに…