【ほん怖】真夜中に鳴り響くナースコール
投稿者:邪神 白猫 (7)
静まり返った病室の中でホッと安堵の息を漏らすと、私は目尻に溜まった涙を拭った。
どうやら見様見真似の念仏でもちゃんと効果はあったようで、その得体の知れない”何か”はこの場を去ってくれたらい。
そうとわかれば、あとは一刻も早くこの場から離れるだけだ。そう思って踵を返した、その時──。
「──!!!? っ……、いやあぁぁああーっ!!!」
突然目の前に現れた女性の姿に驚くと、フロア中に響き渡る程の大絶叫を上げた私はその場にドスリと尻もちを着いた。
「ごっ、……ごめんなさい……。ごめっ……、なさ……っ」
意味もなくひたすら謝り続ける私は、固く瞼を閉じたまま涙を流した。
そんな私を見下ろしているのであろう女性は、その腰を屈めると私の顔を覗き込んだ。
いや──瞼を閉じているのだから、実際に目にしているわけではなかったけれど、間違いなく覗き込んでいると私にはわかったのだ。
私の腕に触れる、サラサラとした髪らしきものが何よりの証拠だったのだから──。
その後、悲鳴を聞いて駆け付けてくれた吉田さんによって保護された私は、翌日以降も数日間は勤務したものの、やはりあの恐怖から立ち直ることができずにその病院を離れることとなった。
あの205号室は一体何だったのか……。その謎は、結局最後まで誰も教えてはくれなかった。
私があの病院を去ってから2年と少し。今も時折り、同県にあるその病院の噂は私の耳にも入ってくる。
誰もいないはずの病室から、真夜中に突然鳴り響くナースコール──。
あの時みた長い黒髪の女性の姿が、今でも忘れられない。
─完─
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