消えた友達一家

私の夫には親友とも言える友達がいました。
その人は男性で、Oさんと言います。

Oさんの家は踏切の近くの家で、夫とOさんは同じ会社で派遣として働いていたので、仕事が終わるとOさんの家に二人で帰って、Oさんのお母さんが作ってくれたご飯を一緒に食べるような生活をしていました。

仕事だけでなく、プライベートの付き合いもあり本当に仲がよかったと言っていました。

ある日、Oさんがストーカー被害に遭っていると夫に話してきたことがありました。
夫が詳しく話を聞くと、Oさんの家の近くにボサボサで髪の長い女が出ると言う事でした。
Oさんの家の二階の窓から外を見ると近くに電柱があり、深夜にその電柱をカーテンの隙間から覗くと街灯に照らされた女が立っていて、Oさんに気が付き笑顔で手を振る、そういって気味悪がっていました。

被害はそれくらいだったので、大丈夫だろとしばらく夫がOさんと一緒にいることを提案しました。
Oさんも喜んでくれて、しばらく夫はOさんと一緒に生活を共にすることにしました。

実際に夫も深夜に電柱から女が手を振っているのを見たそうです。
本当に気持ち悪い奴、とOさんと女の悪口を言って眠ったそうです。

土曜日会社が休みなので、夫が自分の家に着替えを取りに1日帰りました。
日曜日夫がOさんの家に行き、呼び鈴を鳴らしますが出ません。

いつもならOさんか、Oさんのお母さんはいるはずなのにいつになっても出ません。
夫は心配になって、隣の家の人の呼び鈴を鳴らし尋ねました。

すると隣に住んでいた住人が言いました。
「いや、最近Oさん家族は見てないですけどね～。引っ越したんじゃないですか？」

夫は訳が分からずにその日は帰りました。

次の日も、その次の日も、夫はOさんの家に行きました。
しかし、ついにOさんに会うことはありませんでした。
そしてOさんがいなくなった日から電柱の女も現れなくなりました。

あれから20年近く経ちます。
偶然か、必然か私たち家族の一軒家は、Oさんの家の近くにあります。

今ではすっかり違う住民が住んでいます。
なぜ、Oさんは一夜にしていなくなってしまったのか。
電柱にいた女は人間か、霊なのか、今ではすべてが謎のままです。

夫は言っていました。
「俺とOは親友も同然だったんだよ。何も言わずにいなくなったりしない。絶対何かあったんだよ。」

今でも夫はOさんを探しています。