悪はすぐ近くにある

私の夫は清掃会社に勤めてる。
主な仕事は産業廃棄物処理をしていたりする。
企業から依頼があれば、浄化槽の清掃・管理も行う。

こういった職業だから今まで様々な事を体験してきた。
ある大学病院の隣接したコンビニから浄化槽清掃の依頼を受けたことがある。
その時は夫が清掃に行ったが、浄化槽の中にあったのは無数の注射器。

薬物中毒者がそこのコンビニによく出るみたいだった。
もちろん相場よりも高い報酬が支払われた。

大学病院では患者さんの治療をする傍ら薬物に手を出す医療従事者もいる、治療を受けながら薬物をやらないとダメな患者もいる、複雑だよと夫は苦い顔をしていた。

そんな中でも一番触れちゃいけない現場があった。
夫は銭湯の会社の依頼を受けて現場へ向かった。

そこの銭湯では詰まりがあると言われたんだけど、いざ吸ってみたら出たのは人骨。
何本か出てきた。
でも触れてはいけない。

ただひたすら吸い取り、詰まりを解消する。
見てはいけない。

作業完了報告をする。

緊張感のあるなか会社へ戻ってきた。
その会社は1回だけしか依頼をしてこなかったので、そのあとどうなったのかはわからない。

世の中にはどうにもならないことがある。
人骨が出ても届け出ない人だって、会社だってある。

仕事としてただ扱う。
自分を守るために。
見ない、触れない。