真っ赤な花畑での恐怖

あれは夢だったのか現実だったのか自分でも分からないくらい現実味がありません。

でも私は確かに目撃してしまったのでした。

その日とても天気がよく、私は特に目的もなかったですが外を散歩していました。

そしたら目の前に、見たこともない真っ赤な花畑が見えてきたのです。

一瞬、「こんなところあったかな？」と自分でも不審に思ったのですが、私は吸い寄せられるようにその花にしばらく見とれてしまいました。

私は花が好きでいろいろと育てていますが、そんな私でも見たことがないお花でした。

あまりに美しいのですが、その日の晴天に見合わないような毒々しさがある花でもありました。

しばらく見ているとその花の一凛がパカっと開いたのです。

私はそれを見てぎょっとするように立ち上がりました。

花の中から出てきたのは泣いている人の顔だったのです。

その花は一瞬こっちを見てひぃひぃと泣き出しました。

そして助けをも求めるような顔をこっちに向けていたのです。花の中に人の顔があるのです。

私はその光景だけでぞっとするものがあったし、腰を抜かしかけました。

しかしそれでは終わりません。

この花が「ぎゃーん」とすごい声で泣き出して、一気に苦痛の表情をしました。

そして花がぐしゃぐしゃっと枯れていって、その顔もぐちゃぐちゃっと爛れて花ごと散りました。

自分が見たものが信じられなくて、しばし呆然としました。

そしたら私の周りで、すすり泣きのような声が聞こえだしたのです。

それは真っ赤な花の花弁の中から聞こえてきました。

私は信じられない現象が目の前で起こったことに動揺して、小走りでその場を逃げ出しました。

家に帰りついてから私はそのことを家族に話しました。

そして妹について来てもらって、後日あの花畑に行ったのですがその花畑は二度と見つかりませんでした。

あの日私は一体どこに迷いこんでいたのでしょうか。

夢だったのか現実だったのかも分かりませんが、あのような恐怖を二度と味わいたくないと思います。

私があの花畑から帰ってこられたことだけが何よりの救いです。