ある山道脇の塚
投稿者:赤壁二世 (13)
そういって俺は自分のスマホでグーグル検索してみるが、普通に検索結果も出るし、リンク先のURLも普通に開く事ができた。
そして、試しにカーナビに内蔵されている音楽機能を弄ってみれば、先ほどまでフリーズしていた画面が楽曲のプレイリストに早変わりし、すいすい操作できるではないか。
「なんだこれ、普通に動くじゃん」
そう思い、再びナビに切り換えるが、何故かナビ機能だけは動く気配がなかった。
「どういう事?」
B子が訝しむ様に俺を睨むが、俺は何度操作し直しても一向に動く気配の無いナビやスマホの地図アプリに降参するように手を上げる。
「わかんねえ。マジでお手上げだわ、俺機械詳しくないし」
「なにそれ」
B子も俺がどちらかと言えば機械音痴寄りなのを知っていたので、呆れた様に視線を逸らして再び窓を見やる。
さて、どっちの道に行くべきか。
例の天の神様で決めようかと心の中で呟いていたら、彼女が唐突に「え」と声を上げる。
「どったの?」
俺がB子に問い掛ければ、
「今何かいなかった?」
と、B子は分かれ道の右側、その闇夜の広がる奥地を指さす。
俺は車のライトをハイにし目を凝らして奥を覗くが、どうにもアスファルトの路面と脇の草っぱらしか見えない。
後は雑木林が広がるばかりだ。
「動物?」
「……いや、何ていうか人っぽかったけど」
こんな山奥に人?
それこそ荒唐無稽な話だ。
若しくは事件に巻き込まれた憐れな人間とでも出くわしたか。
「それじゃあ見てみる?もし困ってる人がいたら助けないと」
当たり障りのない回答が功を奏したのか、彼女の反応は上々。
俺はアクセルを踏みしめてB子が人影を目撃したという右側の道を進んでいく。
「どの辺にいたの?」
「んー、奥にすっと引っ込んでったように見えたから、もうちょい奥?」
車の故障?本当に事件に遭って逃げ出してきたとか、こんな山道で捨てられた人だろうか?
何れにせよ、こっちはライトを点けて徐行しているというのに、どうして姿を現さないのだろう。
困っているのなら向こうから出てきても良さそうだが。
おっさんは恋のキューピッドの逆バージョンの存在かもしれないですね