ある山道脇の塚
投稿者:赤壁二世 (13)
「マジかよ、最悪。不良品だったのかな」
中古で買ったのがまずかったのだろうか。
今度の休みにでも修理に出すか買い替えるしかないかもしれない。
そう思うと憂鬱だったが、今は彼女とのドライブという事もあり、態度には出さない様にと気を引き締めた。
「ナビ壊れたかも」
「大丈夫なの?」
「まあ、一本道だったしこのまま進めば○○市に出るよ。しばらくは山道だし、退屈だったら寝ててもいいよ?」
「……山でも眺めとく」
山を眺める……、寧ろ山の中にいるから雑木林しか見えないと思ったが、彼女は窓に向き直って頬杖をついていた。
しかし、不運は重なるものだ。
暫く進んでいると、一本道だったはずの進行方向に分かれ道が現れる。
俺は分かれ道の手前で一端停車させると、「はあ?なんで分かれてんだよ」とハンドルを軽く小突いた。
「一本道じゃなかったの?」
「そのはずなんだけど……。ちょっとスマホで見てみる」
カーナビが駄目ならスマホで確認すればいい。
俺はグーグルで現在地を確かめてみるが、何故か現在地が表示されない。
少し不審に思えたが、次に普段使いしていた地図アプリを開いてみる。
しかし、アプリの方も現在地を認識できないのかエラー表示が出るだけだった。
俺の用いる全ての機械が現在地を読み込めなかった為、俺は渋々と彼女に頼る事にした。
「ごめん、何か俺のスマホ駄目みたい。B子ので見てもらっていい?」
「……いいけど、スマホも壊れたの?」
「いや、壊れたっていうか……」
スマホ自体の機能は問題ないのだが、地図というか現在地認識だけ機能しない事をどう説明するべきか悩む。
最悪、俺が嘘をついてこんな山道でスリルを楽しんでいるとでも勘違いされかねない。
普段から彼女にちょっとした悪戯を繰り返してきた日頃の行いのせいだろう。
どうにも彼女に説明しても信じてもらえない、そんな哀しい確信が俺にはあって、正直に切り出せずにいた。
しかし、B子の方も渋々とスマホで現在地を確認してくれているが、どうにも様子がおかしい。
「ねえ、なんか私のもダメなんだけど」
そう言ってB子は俺にスマホ画面を翳すと、そこにはエラー表記された地図の名残りが写されていた。
「電波が悪いって訳じゃないないよな」
おっさんは恋のキューピッドの逆バージョンの存在かもしれないですね