ある山道脇の塚
投稿者:赤壁二世 (13)
それとも俺達の車を怪しんでるのだろうか?
俺とB子は見落としが無い様に左右を隈なく見渡しているが、人影らしきものと遭遇する事はなかった。
そればかりか、道の脇に塚の様に広がる一帯があって、文字が掠れて読めない卒塔婆が立っていた。
卒塔婆から少し離れた位置には、茂みに隠れるようにして崩れた石積みの祠がある。
そして、それらの背景が軒並み崖になっている事に気付いて、ごくりと生唾を呑み込んだ。
「ここ昔なんかあったのかな」
「なんか気味悪いね」
車内越しに眺めても感じる薄気味悪さに俺達はそのまま車を進めて、その場を後にした。
そして、B子が目撃したという人影の捜索に気持ちを切り替えて再び徐行運転しながら道なりに進んでいると、何と、また同じ卒塔婆が立つ小さな塚に突き出たのだ。
「あれ?さっきと同じところ?」
B子の言葉を受けて俺も同じ事を考えたが、そんな筈はない。
俺は道なりに車を走らせてはいたが、同じ道に戻るような曲がり角は無かったし、どちらかと言えば蛇行しながらだが真っ直ぐ進んでいた筈だ。
きっと似たような塚が続いているのだろう。
こういった辺境の山には似たような景色が続くものだ。
「似てるけど違うだろ。山なんて似たり寄ったりだし」
そう言って俺は再び車を走らせる。
きっともう少し進めば何処かの麓に辿り着くはずだ。
この山は地元の市内と反対側の市を跨いだ小山のようなもの。
どこに抜けても必ずどこかの街に続いている。
そうやって自分に言い聞かせて走らせるが、どうしたのか、B子がやたらそわそわしている。
「……どうしたの?トイレ?」
「いや…その…」
B子は何やら仕切りにサイドミラーを見ては最小限の動きで後ろを見ている。
何か見つけたのだろうか。
人影を?
だとしたら教えてくれたらいいのに。
「もしかして、例の人見つけた?」
俺もルームミラーを見やり後部を見るが暗くて殆ど何も見えない。
次にサイドミラーを一瞥すると、何か白い人影がちらりと暗闇に浮かんだように見えた。
「ん?」
おっさんは恋のキューピッドの逆バージョンの存在かもしれないですね