公衆電話のおばあちゃん
投稿者:ぴ (414)
もうずっと昔の話ですが、私は姉妹で大喧嘩して、家を飛び出したことがありました。
喧嘩のきっかけは忘れました。多分何かの取り合いとか子供じみたものだったと思います。
私と姉は昔から仲は良かったですが、喧嘩すると手が付けられないくらい派手な取っ組み合いになります。
私たちの取っ組み合いに堪り兼ねた父がげんこつを落としたんだと思います。
「出ていけ」と父に思いっきり怒られて、私たちはピーピー泣きながら家を飛び出しました。
そして姉と私は逆方向に家出することになったのです。
姉は家から5分もしない近場の友達の家に家出しました。
どうやらその家から電話がかかってきたらしく、母はそちらの家に迷惑をかけて恥ずかしく、すごく参ったらしいです。
ただその上を行くのが私でした。私は姉とは逆に街のほうへと徒歩で歩き出し、夕方で暗くなってきた道を結構な距離歩きました。
そして、そこのスーパーでしばらくうろうろした挙句、そのスーパーを出て近くにあった公衆電話の中に籠ったのです。
いつもなら怖がりでそんなところ行かないくせに、私は怒られた腹いせに少しでも父を困らせたいと思いました。
少しでも長く見つからなかったら心配するだろうし、困ると思いました。
でもまったく探してもらえずに見つからないとそれはそれで困るので、外からでも見える公衆電話を選んだわけです。
子供にしては小癪な考えだと思います。そんなわけで、怖がりの私は公衆電話で外の様子を伺いながら待つことにしたのです。
もう外はすっかり真っ暗になっており、私はだんだん肌寒くなってきた外気に晒されて、体を震わせていました。
公衆電話に入ったもののお金は持っていません。だから両親に電話することはできませんでした。
それに当時まだ小学生だった私は今のように携帯電話を持たされたりする時代ではなくて、連絡手段はなかったです。
私が公衆電話からじっと外を見ていたら、最初は帰省ラッシュで車どおりが多かったのが次第に車の数も減っていきました。それを見て、だんだんと私は不安になってきたのです。
危ない人に攫われてしまうかもしれないという現実的な不安はなかったです。
田舎だったし、そのような危険を予想していなかった私がただ怯えるのはおばけでした。真っ暗だと何か出るんじゃないかとそれだけが怖かったんです。
そうやっておばけに怯えていたのですが、私は気づいたら公衆電話の中で少しの間うとうと眠っていたようでした。
起きたのは「コンコン」と公衆電話のガラスを叩くような音で目覚めたからでした。
私は両親が迎えに来てくれたと一瞬思いました。
そしてパッと顔を上げたら、そこにいたのは知らないおばあちゃんでした。
公衆電話越しにおばあちゃんは「お嬢ちゃんどうしたの?」と心配そうに声をかけてきたのです。
知らないおばあちゃんに声をかけられて、私は少し怯みました。両親には知らない人に声かけられても着いていっちゃダメと厳しく言われていました。
だからそれを律義に守って、少しの間おばあちゃんを無視してしまいました。
だけどあまりにやさしく聞いてくれるので、思わずうっと涙が出てきたのです。
そして私は見ず知らずのおばあちゃんに「喧嘩した」と打ち明けました。
ひくひくと泣いている私におばあちゃんはすごくおっとりとした様子で話を聞いてくれました。
いい話です。ひいおばあさんが、守ってくれたんですね。ご先祖から、いい家庭であったのでしょう。
良いお話でした。ありがとうございます。