隣から

俺はフリーターなんだけど、ある日、ネカフェで休んでいたんだ
何冊か漫画読んで眠くなってきたから、ちょっとウトウトしてた
そしたら、隣から声が聞こえてくる

「はい・・・はい・・・。ええ。その件でしたら、もう間もなく終わりますので。ええ・・・。すみません」
男の声だった
どうやら仕事で電話しているらしい

うるさいな。こっちは眠いのにと思いながらも、俺は隣からの声を聞いていた

「はい・・・はい・・・。本当に申し訳ございません。本当にもう間もなく・・・はい。完了予定ですので」

どうやら電話先の相手に怒られているようだ。会話の内容からするに、納期に間に合わないとかそういう話みたいだ

正社員は大変だな

「はい。今まさに・・・。はい。やってますので。もう間もなくです」

ザクッ　ザクッ

ん？

今まさにって、隣の部屋で何か作業しているのか

よく聞くと、会話以外の音が聞こえる
何かを切るような音だ

ここで何かの部品でも作っているのか？　
そういうのってネカフェでやっていいんだろうか

まあ、俺がどうこう言う立場じゃないけど

「はい・・・。はい・・・！　申し訳ありません！　　申し訳ありません！　もう終わりますから！　もうやりますから許してください！」

男の声がだんだん大きくなっていく
どうやら泣いてしまっているようだ
悲壮なカンジがこっちにまで届いてくる

ザクッ！　ザクッ！

作業の音も大きくなっている

おいおい
大丈夫か

なんか雲行き怪しくないか？
泣いてるみたいだし